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欲しい物
バニーがふと口を開く。
「なぁ」
「イヌって、本当に貯金ねぇのか?」
「無いですよー」
即答。
迷いも躊躇もない。
「いや、お前さ」
バニーは少し呆れたように続ける。
「識別個体の討伐数と報酬、聞いたけどな」
「どう考えてもパチンコで使い切れる額じゃねぇだろ」
「潜入調査の前はありましたよ」
「ん?」
「ほら、あそこ」
少しだけ笑う。
「ヤバい台あるじゃないですか」
「あー……」
バニーが顔をしかめる。
「富豪が群がって、まとめて破産するやつな」
一拍。
「……まさか」
「全部使いました」
さらっと言う。
「はぁ!?」
「もったいな!」
思わず声が上がる。
「タワマンの最上階、何部屋も買えただろ」
「興味ないんで」
即答。
温度差がひどい。
「うわぁ……引くわ」
「まぁまぁ」
軽く流す。
「じゃあさ」
バニーは少しだけ真面目な顔になる。
「これ欲しい、とかは無いのか?」
「別に無いですよ」
肩をすくめる。
「欲しい物は、もうありますし」
一拍。
バニーが目を細める。
「……なんだそれ」
イヌは少しだけ視線を逸らして、笑う。
「なんでしょうねー」




