インスティンクトの練度
黒崎がふと口を開く。
「なぁ」
少し間を置く。
「仮に十年訓練して、インスティンクト使えるようになったら」
「お前と同格になるのか?」
即答。
「なるわけねぇだろ、バーカ」
「待て待て待て」
黒崎が手を上げる。
「暴力はやめろ。ちゃんと理由言うから」
「いいぜ」
イヌは軽く肩を回す。
「遺言くらいは聞いてやる」
「まず持続時間だ」
黒崎は指を立てる。
「十年やって、五分維持できりゃ上出来だろ」
「その五分、凌がれたらどうする?」
一拍。
「その後の反動は?」
「……あー」
少しだけ納得する。
「常時発動できるお前がおかしいのか」
「そういうこと」
イヌは軽く頷く。
「次に練度」
「お前は“見える”だけだろ」
「俺は“分析できる”」
「精神状態、癖、反応」
「全部読める」
「それがそのまま身体能力の差になる」
黒崎は黙って聞く。
「……なるほどな」
小さく息を吐く。
「使える=強い、じゃないのか」
「むしろ逆だな」
イヌは笑う。
「下手に使ってガス欠するくらいなら、普通に戦った方が強いまである」
「……考えないとな」
「そうそう」
満足そうに頷く。
そして、にやりと笑う。
「理解したか?」
一拍。
「お前が一生、俺に勝てない負け犬ってこと」
沈黙。
黒崎は無言でスマホを取り出す。
「……もしもし」
「バニーさん」
「イヌ絞めるんで、少し止めてください」
電話越し。
「十分くらい動かないでいてね」
「は?」
イヌが固まる。
「え、ちょ――それズルくないですか?」
通信終了。
一拍。
「いや待てそれは――」
言い終わる前に。
――ボコされた。




