同化
バニーに向かって、静かに口を開く。
「バニーさん、取引しませんか?」
「……なんだよ」
警戒はしているが、拒絶はしない。
「正直、このままだと勝ち目ないですよね」
一瞬、言葉が詰まる。
「……」
否定できない。
「そこで提案です」
間を置いて。
「同化しましょう」
「は?」
即座に眉をひそめる。
「何言ってんだお前」
「大丈夫ですよ。主導権は基本そっちです」
「いやそういう問題じゃねぇだろ」
少しだけ間。
「……私、消えたりしないよな」
「そこまで強いと思います?」
あっさり返される。
「……あー……」
微妙な納得。
「同化しても、普段はバニーさん主体でいいです」
「時々、私が出てアドバイスします」
「その代わり――」
「日曜日は、私にください」
「……マジかよ」
沈黙。
「てかさ」
バニーが少しだけ睨む。
「お前、それ勝手にやればいい話じゃねぇのか」
「拒絶されたら弾かれますから」
淡々とした説明。
「……」
少し考える。
(アイツのため、か)
(……それに)
(こいつの気持ちも、分かる)
小さく息を吐く。
「……分かった」
「ありがとうございます」
――同化。
感覚が重なる。
「あー……なんだこれ」
「違和感ありますよね」
「気持ち悪ぃな……」
「すぐ慣れますよ」
一拍。
「あ、今日は日曜日なので」
「私の日ですね」
「……あぁ、分かった」
意識が、ゆっくり沈む。
「ご主人様ー!!ただいまです!」
明るい声。
「おかえり」
自然な返答。
「ギューして下さい」
「……はいはい」
軽く抱きしめる。
「嬉しいです」
少しだけ柔らかく笑う。
「今日は外、行こっか」
「はい!」
外出。
「このクレープ美味しいですね!」
「食べ方、可愛いなぁ」
ほっぺについたクリームを指で取る。
そのまま口へ。
「えへへ」
「私のも一口あげる」
「やったー!」
帰宅。
「楽しかったです!」
「私も」
「ご主人様、大好きです」
一瞬、言葉が揺れる。
「……私も」
少しだけ間。
イヌが首を傾げる。
「でも」
「なんで、今日は入れ替わってるんですか?」
「……え?」
「分かりますよ」
迷いのない声。
「大好きな人は、見分けつきますから」
沈黙。
「……日曜日だけ、交代なんだ」
「そうなんですか」
「……嫌だった?」
少しだけ、不安が混じる。
「………」
一瞬、考える。
「記憶、戻ってるんですよね」
「……うん」
「僕のこと、恨んでないですか」
まっすぐな問い。
「恨んでないよ」
即答。
「私は、君に救われてたから」
「……そっか」
小さく頷く。
「ご主人様、了承してるんですよね?」
「ちゃんと、確認したよ」
「なら、大丈夫です」
安心したように笑う。
「今日は一緒に寝よっか」
「はい!」




