三角関係
謝罪を終え、外に出る。
黒崎が額を押さえたまま、小さく息を吐く。
「……頭痛い」
「さっき頭打ちましたもんね」
バニーが軽く同情する。
黒崎は顔をしかめたまま続ける。
「いや……あいつが謝るとか思わねぇだろ。そりゃびっくりするわ」
「それ、私のおかげですね」
さらっとした声。
黒崎の動きが止まる。
「……え?」
視線がゆっくりと横へ向く。
バニーが肩をすくめる。
「あー……こいつ。イヌの元カノな。死んでゲヒュールになって、今は私と契約してる」
「……は?」
理解が追いつかないまま、さらに一歩遅れる。
「はじめまして」
柔らかい声。
黒崎は数秒固まったあと、ようやく口を開く。
「……記憶、あるのか?そんな前例聞いたことねぇぞ」
「愛の力です」
あまりにも軽い返答。
黒崎は一瞬だけ遠い目をする。
「……癪だが」
頭を押さえながら続ける。
「こいつの指示通りにやったら、あいつ普通に謝った」
「本当ですか?」
「マジだ」
一拍。
「……ってことは」
顔が変わる。
「制御できるのか?あいつを」
「はい」
即答。
黒崎は勢いよく手を差し出す。
「頼む。マジで頼む。これからもよろしくお願いします」
「いえいえ」
軽く応じる。
その様子を見て、黒崎がぼそっと口を挟む。
「……記憶戻ったなら、もう付き合えばいいんじゃねぇの。フクスと朱音もそうだったし」
「そのつもりですよ」
あっさり返る。
空気が一瞬で変わる。
「おいこら」
バニーが睨む。
「私の恋人を勝手に話進めんな」
黒崎が固まる。
「……え?」
「付き合ったのか?」
「……あー、はい」
ぎこちない返事。
黒崎はしばらく黙り込む。
(……状況が複雑すぎるだろ)
思考が追いつかない。
視線が自然とゲヒュールに向く。
(……なんか、こっちの方がまともに見えるな)
一瞬、本気でそう思ってしまう。
(女神か……?)
「……で」
なんとか話を戻す。
「本当に制御できるのか?」
「簡単ですよ」
さらっと言う。
「ワンコの躾と同じです」
「……お、おう」
黒崎はそれ以上考えるのをやめた。




