格の差
バニーの声が低く落ちる。
また黒崎に迷惑をかけたのか、と。
イヌはいつも通り軽く否定する。
だが内容を聞けば、言い逃れはできない。
応援に入った現場で、ゲヒュールを蹴り飛ばし、
そのまま別の人間にぶつけて負傷させたらしい。
イヌは首を傾げる。
そこにいた方が悪いのではないか、と。
バニーのこめかみがわずかに動く。
その瞬間。
肩に触れる感触。
横にいたゲヒュールが、何も言わずに合図を送ってくる。
――撫でて下さい。
頭の中に直接響く声。
「は?」
思わず声が漏れる。
――早く。
促されるまま、バニーはイヌの頭に手を置いた。
「ん?なんですか?」
イヌが不思議そうに見上げる。
――“頑張ったけど、ちょっと失敗しちゃったんだよね”って言って下さい。
言われるまま、言葉をなぞる。
「……頑張ったけど、失敗しちまったんだな」
「え?」
イヌが一瞬だけ固まる。
――“頑張ったのは偉い。でも謝れたらもっと偉い”です。
「頑張ったのは凄いな。けど、謝りに行けたらもっと凄いと思うぞ」
少しだけ間。
「……うーん」
珍しく迷う。
――ここで抱きしめて、“一緒に謝りに行こう”です。
バニーは一瞬だけ眉を寄せるが、言われた通りに動く。
イヌを軽く引き寄せる。
「……一緒に謝りに行くか」
「……はい」
素直な返事。
バニーは内心でわずかに驚く。
(……あっさり行ったな)
その横で。
ゲヒュールが、満足そうに目を細める。
――格の差、見せちゃいましたね。
――やっぱり私の方が相応しいです。
「……ウゼェ」
思わず漏れる。
「え?何がです?」
イヌは何も分かっていない顔で首を傾げる。
その後。
謝罪の場で、黒崎は足を滑らせて転倒し、頭を打った。




