出生
一卵性双生児。
珍しいが、決して極端に少ないわけではない。
だが――
双胎消失症候群となれば、話は別だ。
胎内で、片方が消える。
いや、正確には“消える”のではない。
――取り込まれる。
その胎児は、生まれる前に片割れを内に抱えたまま、この世に出た。
当然、影響がないはずがない。
人格に歪みが生じること。
そして時に、説明のつかない才能が発現すること。
例外のような個体。
だが、その子供はさらに異質だった。
常に“何か”と一緒にいた。
それはゲヒュール。
死んだはずの片割れが、形を変えてそこにあった。
異常なまでの感情の出力と濃度。
それを喰らいながら、ゲヒュールは子供と共に成長していった。
――まるで、最初から一つだったかのように。
現在。
イヌは満足そうに笑っている。
「えへへ、ご主人様ー。今日はやけに甘やかしてくれますね」
バニーは気だるげに視線を向ける。
「どこぞの馬鹿に取られかねないからな」
軽く言い捨てる。
「そういえば、最近変な夢見るんですよね」
「……ん?」
「元カノが出てくるんですよ。なんか、すごく甘やかしてくれて」
少し考えるように首を傾げる。
「やっぱり、忘れられてないのかなぁ」
バニーは無言で視線を逸らす。
(あのクソ野郎……夢に干渉してやがるな)
(“一回だけ”じゃなかったのかよ)
「……で?」
少し間を置いて聞く。
「何か言われたのか」
「私と今のご主人様、どっちが好きって聞かれましたね」
空気がわずかに変わる。
「……なんて答えた」
イヌは、特に深く考えた様子もなく言う。
「どっちも大好きって答えました」
沈黙。
バニーは一瞬だけ目を閉じて、
「……そうか」
短く返す。
(……まぁ、いいか)
そう思ってしまった時点で、
少しだけ負けている気がした。




