イヌの取り合い
「あー……眠い」
バニーがソファにもたれかかる。
「……少しだけ寝るか」
目を閉じる。
――
「ん……」
ゆっくり目を開ける。
「よく寝た……」
「ご主人様」
イヌの声。
「……なんだよ」
体を起こす。
「ん?」
視界に入ったものに、思考が止まる。
ゲヒュールが、人型になっている。
しかもやたら毛量が多い。
そのまま――イヌを抱きしめて寝ていた。
「……」
一拍。
無言で蹴り飛ばす。
「痛っ!?」
ゲヒュールが転がる。
「イヌ」
「はい」
「外出てろ」
「え、はい」
素直に出ていく。
扉が閉まる。
静寂。
「……テメェ」
低い声。
「人の恋人に何してんだクソがよ」
「は?」
ゲヒュールが眉をひそめる。
「私のなんですけど」
「元カノがシャシャんな」
即答。
「はー?」
空気が変わる。
「おこぼれ貰っただけの人間に言われたくないんですけど?」
「なにが“バトン渡しました”だよ」
「口悪いですよー。嫌われますよ?」
「テメェが言うな」
一歩踏み込む。
「手ぇ引いたんじゃねぇのかよ」
「引きましたよ?」
軽く肩をすくめる。
「恋人としてはね」
「……は?」
「抱きしめただけですけど?」
「未練タラタラじゃねぇか!」
「当たり前でしょ」
即答。
「そもそも」
少しだけ目を細める。
「あの子が貴方に懐いた原因、私なんですけど」
「は?」
バニーが鼻で笑う。
「取られたからって負け惜しみか?」
「はい、今の一言で決めました」
声の温度が下がる。
「奪い返します」
「……」
「文句、言いませんよね?」
沈黙。
バニーがゆっくり口を開く。
「かかってこいよ」
「元カノ」
ゲヒュールが笑う。
「風情が、でしょ?」
「うるせぇよ」
空気が張り詰める。




