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もしも二
「着いたね」
「……識別個体」
イヌが少しだけ目を細める。
「強いの?」
「名前が付くレベルのやつ。まぁ、問題ない」
「契約してなくても大丈夫?」
「あー、俺さ」
軽く首を鳴らす。
「インスティンクト、使えるんだよね」
「……え?」
「こんな感じ」
踏み込む。
一瞬。
それだけで終わる。
「……今の何?」
「終わった」
振り返る。
「え、ちょっと待って」
「もう倒したの?」
「うん」
「……」
「すごいじゃん」
「でしょ」
少しだけ得意げに笑う。
「なんか機嫌いいね」
「識別個体倒すとさ」
軽く肩を回す。
「金がいいんだよ」
「あー……なるほど」
「これでしばらくパチンコ行ける」
「ほどほどにね」
「……」
一瞬、止まる。
「やっぱやめよ」
「え?」
「なんで?」
「欲しいもの、あるし」
「へぇ、珍しいね」
「今回の金で買う」
「無駄遣いはダメだよ?」
「無駄じゃない」
短く言い切る。
――
夜。
「ただいま」
「おかえり」
「これ」
小さな箱を差し出す。
「……?」
受け取る。
開ける。
「……これ」
「うん」
少しだけ視線を逸らす。
「結婚指輪」
「……え?」
間。
言葉が出ない。
「ずっと一緒にいよう」
ぶっきらぼうに言う。
「……」
一歩近づく。
「嫌?」
「……バカ」
少しだけ笑う。
「当たり前でしょ」
指輪を握る手が、少しだけ震えている。




