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イヌの変化
管理職が声をかける。
「黒崎君」
「はい」
「最近の――なんだが」
少し言葉を選ぶ。
「……なんというか、少しマトモじゃないか?」
「え?」
「迷惑かける頻度が減ったというか」
「ここ最近、謝ってない気がするんだ」
「……確かに」
黒崎は小さく頷く。
(パチンコの軍資金も、バニーがいる時は妙に大人しいな……)
「何かしたのか?」
「いえ、特には」
「……気のせいか」
一拍。
「すみません、少し電話いいですか」
「構わん」
――
通話を終える。
「……なるほど」
「理由、分かりました」
「お、なんだ?」
「恋人の影響らしいです」
「あぁ……」
管理職が納得したように頷く。
「あいつの恋人、相当まともだったんだな」
「えぇ、多分」
――
数秒後。
「黒崎君」
「はい」
「――が置いてた金を使って、パチンコ行ったらしい」
「……は?」
「本人曰く、“増やして返すつもりだった”と」
沈黙。
「……」
黒崎は何も言わない。
ただ、こめかみを押さえる。
(……アイツ、本当にいつか殺す)
管理職が小さくため息をつく。
「やっぱ気のせいだったな」
「えぇ」
即答だった。




