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黒崎の地獄の始まり
上層部の会話。
「ゲヒュールと契約してない状態で、識別個体を撃破した?」
「はい」
一瞬、空気が止まる。
「……なんだそいつ」
「優秀とかいうレベルじゃないぞ」
「ただ」
「ん?」
「報告書なんですが」
紙が机に置かれる。
「…………」
沈黙。
「……まぁまぁ強かった、ってなんだこれ」
「舐めてんのか?」
「一応、指導はしたんですけど」
「全く響きません」
「どうすんだコイツ……」
「あと一つ」
「……まだあんのか」
「無断遅刻と欠席が多すぎます」
「……人間性、喰わせたのか?」
「いえ。未契約は確認済みです」
「マジかよ……」
深いため息。
「才能だけで暴れてるタイプか」
「一番タチ悪いな」
数年後。
「黒崎くん」
「はい」
「――と親戚って本当?」
「え?はい、そうですけど」
一瞬、間。
「あのさ」
少しだけ言いにくそうに続ける。
「悪いんだけど、あいつの管理してくれない?」
「……」
黒崎は少しだけ考えて、
「分かりました」
とだけ答えた。
その日から。
黒崎の地獄が始まった。




