ゲヒュール対策課にイヌが入った頃
「イヌ、ゲヒュール対策課に入ったのっていつだっけ」
バニーが軽く聞く。
「中学卒業してすぐですね」
イヌは何でもないことのように答える。
「……は?」
一瞬だけ間が空く。
「なんでだよ」
「パチンコする金が欲しかったからです、その頃は年齢制限無かったですし。」
「最低すぎる理由だな」
肩をすくめる。
「あー、欲望解放されたのって十年くらい前だっけ」
「ですね」
「お前、それより前から欲望の塊だったのかよ」
「……おかしいですね」
「何がだよ」
「一応、普通のつもりなんですけど」
「無理あるだろ」
バニーはため息をつく。
「てか中卒で入れんのか?」
「普通は無理ですよ。学力試験と体力テストがありますし」
「まぁお前なら通るか」
「契約してなくても強かったですし」
「見えてたのか?」
「はい。感情の出力と濃度が高いので」
「……規格外だな」
軽く呟く。
「恋人はなんて言ってた?」
「止めてましたよ。危ないからって」
一拍。
「一緒に居たので、何回か巻き込まれてますし」
「そりゃ止めるわ」
「……」
わずかな沈黙。
「どうした」
「いや」
少しだけ視線を落とす。
「その頃だったなって」
「トイシェンが接触してきたの」
空気が少しだけ変わる。
「……理由は?」
「父親を騙して借金まみれにして、自殺させて」
淡々と続ける。
「借金を肩代わりさせて、弄んでました」
「後から知りましたけど」
「……クソだな」
「何をされたかも分かってます」
一瞬だけ間。
「口には出しませんけど」
「……あぁ」
バニーは小さく息を吐く。
「てか私、名前捨ててなかったら危なかったのか」
「そうですね」
「……怖」
軽く笑う。
「……」
イヌは何も言わない。
「落ち込んでんのか」
「別に」
即答。
バニーは無言で引き寄せる。
「たまには泣いてもいいと思うぞ」
「……」
少しだけ間。
「……ご主人様」
小さな声。
「なんだよ」
「ギュー、強めでお願いします」
「はいはい」




