教師
職員室の扉が勢いよく開く。
顔を上げる前に、声が飛んできた。
集金した金が盗まれた件を、妙に楽しそうに口にする。
思わず眉をひそめる。
帰りのホームルームで全員を座らせたままにしてほしい。自分が犯人を見つける、と言う。
一瞬、間。
拍子抜けするほど軽い。
(……証拠でもあるのか?)
考える。
だが止める理由もない。
好きにしろ、とだけ返す。
軽い返事。
足音が遠ざかる。
扉が閉まる。
小さく息を吐く。
「……たまにはまともなこと言うじゃねぇか」
――数時間後。
頭を抱えることになる。
証拠もなしに蹴り飛ばし、反応で確信し、脅して吐かせる。
(……やり方が終わってる)
だが――
金は見つかっている。
結果は出ている。
「……評価しづらすぎるだろあいつ……」
深いため息。
一ヶ月と少し
廊下で呼び止める。
「おい、――」
少女が振り返る。
菓子の持ち込みについて問いただす。
あっさりと認める。
怒るつもりはない。
ただ、理由が気になる。
優等生の行動としては不自然すぎる。
返ってきたのは、あまりにも単純な答えだった。
「あの子が喜ぶから」
一拍。
「言うことも聞かせられるので」
名前を聞く。
納得するしかない相手。
少しだけ、間。
「……本当にか?」
「試します?」
軽い返答。
止めない。
少し距離を取る。
様子を見る。
勉強を頼んでいる。
断られている。
同級生が財布に手を伸ばしかける。
――想定内。
その瞬間。
少女が割って入る。
菓子。
一拍。
了承。
(……は?)
思考が止まる。
流れが、そのまま決まる。
勉強が始まる。
――三十分。
少女が教える。
普通だ。
次の瞬間。
イヌが口を挟む。
一言。
核心。
(……合ってる)
雑だが、正確。
さらに数問。
同じ。
(再現性もある、か)
四時間後。
終わる。
満足げな顔で帰っていく。
成立している。
沈黙。
少女が頭を撫でる。
機嫌がいい。
視線を外す。
空を見る。
(教育的には最悪だ)
少しだけ間。
(……だが)
言葉を探す。
見つからない。
ため息。
「……今回だけだ」
小さく呟く。
「特例で見逃す」
少女は軽く頷く。
そのまま去っていく。
一人残る。
空を見上げる。
(……線、引いたつもりだったんだがな)
少しだけ間。
「……最悪だな、あいつ」




