二人が付き合って。
イヌと少女が付き合って一ヶ月。
噂はすぐに広まった。
少女が高嶺の花だったこともあるが、
それ以上に、イヌの“評判”が理由だった。
「あの二人、付き合ってるってマジ?」
「いや……あの子、大丈夫かよ」
そんな声は、珍しくもなかった。
テスト二週間前。
同級生が声をかける。
「なぁ、勉強教えてくれよ」
「え、やだ」
即答だった。
「頼むって! 学年一位だろ! 今回ヤバいんだよ、ゲーム取り上げられる」
「自分でやれば?」
取り付く島もない。
同級生はため息をつき、最終手段に手を伸ばしかける。
そのとき。
「普通に教えてあげればいいじゃん」
少女が割って入る。
「え……?」
「頭悪いのは別に悪いことじゃないでしょ」
さらっと言って、鞄を開く。
中から、大量のお菓子。
「これ食べながらやろっか。上手く教えられたら、ご褒美もあげるよ」
ちらっとイヌを見る。
「………」
同級生は迷う。
(それで言うこと聞くか……?)
「まぁ、人に教えるのも勉強になるし」
イヌが軽く肩をすくめた。
「いいよ」
「え?」
「一科目三十分な」
「なんで時間制?」
「授業聞いてねぇから、教科書読む時間いる」
「……大丈夫か?」
「多分な」
勉強会が始まる。
最初の三十分。
イヌは教科書を眺め、
少女が隣で丁寧に教えていた。
「ここ分かんない」
「じゃあ、この公式から試してみよっか」
「……いや、それじゃ解けない」
横からイヌが口を挟む。
「形変わらねぇだろ。こっちの公式使え」
「え? それ参考書の問題だけど」
「だから何」
さらっと言う。
「……お前、本当に今読んだだけか?」
「いいから続けろよ」
雑だが、的確だった。
「ここは――」
核心だけを抜くように説明する。
「ヒント出したから、あとは自分でやれ」
「え、なんで?」
「俺が解いたら意味ねぇだろ」
「……それはそう」
「……あ、分かった」
「え? お前も?」
気づけば四時間。
同級生はぐったりしながらも、どこか満足げだった。
「ありがとう、助かった」
「へいへい」
「どういたしまして」
見送る。
「ん?」
少女が振り返る。
「……あ、撫でる約束だったね」
軽く手を伸ばす。
「いい子いい子」
「……」
イヌが少しだけ嬉しそうに目を細める。
「今日は頑張ったし、泊まってく?」
「え、いいの?」
「うん。一緒に寝よっか」
「やった」
「ちゃんと連絡はしてね」
「分かってるって」




