恋人との出会い
少女は、ふと呟く。
「……寂しいなぁ」
家には誰もいない。
母はいなくなり、父はほとんど帰ってこない。
当たり前みたいに、一人だった。
教室。
何気ない会話が耳に入る。
「集金したお金、盗まれたらしいよ」
「へぇ、どうするんだろ」
「どうしようもなくない?」
「誰がやったんだろうね」
「あいつじゃない?」
名前が出る。
「クズなんだよね。適当だし雑だし」
「でも、やる時はやるよ?」
「餌で釣ればね」
「なるほどね」
少女は黙って聞いていた。
帰りのホームルーム。
視線の先。
あの男が、教室を歩いている。
(……何してるんだろ)
止まる。
次の瞬間――
蹴り飛ばした。
(え……?)
思考が止まる。
証拠でもあるのかと思った。
でも――
「証拠は?」
「今から集める」
(……は?)
理解が追いつかない。
それでも、話は進む。
反応を拾い、言葉を詰めていく。
気づけば、場所まで言い当てていた。
(……なんで分かるの?)
結局、お金は見つかった。
(すご……)
少しだけ、見方が変わる。
(根はいい人なのかも)
――その直後。
「ご褒美下さい」
(……え?)
空気が一瞬で変わる。
断られる。
当然だ。
そして――
「ザッケンナ!!」
(いや、当たり前でしょ)
思わず呆れる。
帰り道。
少女は声をかける。
「ねぇ」
振り向く。
「さっき、すごかったね。ヒーローみたいだった」
「金もらえなかったけどな」
即答。
(……ダメだこいつ)
少し笑う。
「お金無いの?」
「あるけど。働いてご褒美無しはなぁ」
(発想が終わってる)
少女は、ふと手を伸ばす。
頭に触れる。
撫でる。
「これでいい?」
「……え?」
戸惑う顔。
「ご褒美」
「うーん……無いよりマシかな」
(単純)
自然と口元が緩む。
「じゃあさ、うち来る?」
「お菓子くらいならあるよ」
「本当に?」
一気に顔が明るくなる。
「今日は頑張ったしね」
「やった」
(……可愛いな)
――朝。
目が覚める。
腕の中。
当たり前みたいに抱きついてくる。
「……起きた?」
「まだ早いですよ」
「どうせ甘えるでしょ」
「当たり前ですけど」
小さく笑う。
「ほら、撫でて」
「はいはい」
頭に手を置く。
満足そうに目を細める。
(……ほんと、単純)
でも。
少しだけ思う。
(こういうの、嫌いじゃないかも)




