イヌの学生時代
「イヌって学生時代どうだったん?」
バニーが何気なく聞く。
「人気者でしたよ」
即答。
「なんかエピソード無いのか?」
「ありますよ。中学生の時に、ちょっと面白いのが」
軽く笑う。
――回想。
「なぁ――、今日このクラスで集金した金が盗まれたって知ってるか?」
「知ってるけど、それがどうした?」
「お前さ、天才じゃん。犯人見つけるの手伝ってくれよ」
「無理無理。出来ないから」
「出来ない、じゃなくてやらない、だろ」
「当たり前じゃん」
間。
「……かなりの額らしいぞ。犯人見つけたら、多少は礼も出るんじゃねぇの?」
沈黙。
ほんの一瞬だけ、イヌの目の色が変わる。
「マジで許せねぇよなぁ、悪い事する奴って」
「俺がなんとかするか」
「お前のそういう所、好きだけど嫌い」
――帰りのホームルーム。
「はい、そのまま座って」
教師の声で教室がざわつく。
「今日、盗まれた金を取り返す」
イヌはゆっくりと教室を歩き出す。
一人の男子の前で足を止め――
躊躇なく蹴り飛ばした。
「ッ、何すんだよ!」
「お前だな」
「証拠は?」
「今から集める」
短く言い切る。
「金の場所を聞く」
「知らねぇよ」
「教室?」
「……」
「一階。二階。三階」
わずかな間。
「三階の空き教室だな」
「は?」
「三階の時だけ反応があった」
「でも余裕があった」
淡々と続ける。
「つまりこの教室じゃないし、適当に隠してるわけでもない」
「正確な場所を吐け」
沈黙。
「……連れてけば分かる」
一歩踏み込む。
「その時に半殺しにされたくなかったら、今言え」
数秒。
「……分かった」
――結果、金は見つかった。
「先生!」
イヌが手を挙げる。
「なんだ――」
「お金見つけたんだから、ご褒美ください」
一瞬の沈黙。
教師がため息を吐く。
「お前な……入学してから思ってたけど」
「マジでそういう所だぞ」
「蹴り飛ばした件は不問にしてやる。それで終わりだ」
「え?お金は?」
「やる理由ねぇだろ」
「ザッケンナ!!」
――回想終了。
「ってことがあったんですよ」
イヌが満足げに言う。
「酷くないですか」
「あぁ……」
バニーは少しだけ間を置いてから答えた。
「酷いな」
「ですよねですよね!」
嬉しそうに身を乗り出す。
「お前が酷ぇな」
「え?」
イヌが首を傾げる。
「どうしてそうなるんです?」




