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ゲヒュールに感情を喰わせて変わった事
バニーが何気なく口を開く。
「そういやさ、イヌ」
「なんですか、ご主人様」
「ゲヒュールに尊厳喰わせてから、なんか変わったのか?」
「……」
イヌは少しだけ黙る。
「逆に、ご主人様はどう変わりました?」
「あー……」
バニーは軽く肩をすくめる。
「人間関係は歪んだな」
「“信頼できない”が前提になると、色々狂う」
「だから契約で縛る。強制履行、多用してるし」
「ふーん……」
イヌは小さく頷く。
「ってことは、契約で縛ってる僕のことは結構安全だと思ってるんですね」
「……」
(下手に縛ってない奴より危険だろ、むしろ)
「あー……まぁ、そうかもな」
「なんだか嬉しいです」
「で、お前は?」
バニーが視線を戻す。
「何が変わった」
「それが……」
一拍。
「何も変わってないんですよね」
「は?」
「喰わせてないとかじゃないのか?」
「いや、それだと能力使えてるのが説明つかないですし」
「……」
バニーは眉を寄せる。
(尊厳が軽い……わけじゃねぇ)
(こいつが、元から欠けすぎてるだけだ)
(尊厳一つ消えたところで、誤差にしかならない)
「あー……」
イヌが首を傾げる。
「どうしました?」
バニーは一瞬だけ考えてから、肩をすくめた。
「良かったじゃねぇか」
「何も変わらずに、能力だけ手に入ったんだろ」
「まぁ、確かに」
イヌはあっさり頷く。
「気楽にいきましょう」




