黒崎の苦労
朱音がふと思い出したように口を開く。
「そういえばさ、黒崎」
「んー、どうした」
黒崎は気のない調子で返す。
「今でも思い出すんだけどさ、ヴェーラーと戦うってなった時」
「あんただけ、やたら止められてなかった?」
「あと、撃破後もしばらく圧かけられてたじゃん」
「まぁヤクモ絡みかもだけど」
「あー……あったな」
黒崎は軽く頷く。
「でも今は無いわよね?」
「多分、アイツの影響だな」
「アイツ?」
「前に話しただろ。俺の親戚の、対策課で一番強い奴」
「え、それ関係あんの?」
「あいつに直接仕事振りたがる奴がいないんだよ」
「だから俺が代わりに振ってる」
「へぇ……黒崎の言うことは聞くんだ」
「……」
「ん?」
「パチスロの軍資金やらないと働かねぇ」
「は?」
一瞬、朱音が固まる。
「えっと……給料は?」
「普通にクソ高い」
「……は?」
「対策課の最終兵器だからな」
「じゃあなんで……」
「クズなんだよ」
「あー……うん……」
朱音は遠い目をする。
「俺の給料もそれなりにあるけどな」
「あいつに仕事振るための出費、マジで馬鹿にならん」
「手懐けられる人いないの?」
「一応、ご主人様って呼んでる奴はいる」
「え、じゃあその人に頼めばいいじゃん」
「その人も頭抱えてる」
「……詰んでない?」
「詰んでる」
即答。
少し間。
「経費で落とせば?」
「無理に決まってんだろ」
「高給払ってる奴にさらに金渡してますなんて言えるか」
「それよりな」
「それより?」
黒崎は少しだけ顔をしかめる。
「金払う方がまだマシなんだよ」
「……え?」
「アイツが問題起こして、俺が頭下げて回る方が地獄だ」
沈黙。
朱音がぽつりと呟く。
「黒崎……あんた、苦労してるのね」




