クズの矯正奮闘
「おい、イヌ。お前ってトイシェン討伐前は、まだ少しまともだったよな」
バニーがふと思い出したように言う。
「今もまともですけど?」
イヌは首を傾げる。
(まぁいい。この程度で引っかかってたら身が持たない)
「黒崎さんにインスティンクト、真面目に教えてたろ」
「はい。ちゃんと教えましたよ」
(あれで“ちゃんと”かよ……)
「なんでだ?」
(ヒントでも拾えればいいが……)
「普通にフクスを借りたかったからですけど」
(あ、ダメだ)
(餌が無いと動かねぇやつだ、こいつ)
バニーは一瞬考える。
「トイシェン討伐前、他に何か変わったことなかったか?」
「あの頃は、トイシェンを倒すことで頭いっぱいでしたね」
(なるほど……一点集中なら多少マシになる、と)
「……なるほどな」
(じゃあ“それ”に代わる餌は――)
一拍。
(……これでいくか)
「恋人との思い出は?」
「ハグして一緒に寝るのと、おやすみのキスです」
(はい詰み)
(それ、今やってるやつな)
「じゃあさ、私にしてほしいことは?」
(こっちから誘導する)
「ずっと側にいてください」
(……可愛いをここで出すな)
(無自覚なのが一番タチ悪い)
「他は?」
「えっと……」
少し考える。
「ご主人様が近くにいるだけで、僕は幸せなので」
(……)
(健気かよ……いや違う、違うだろ)
バニーは軽く咳払いする。
「じゃあ、その“ずっと側にいる”ためにはどうするのが一番だと思う?」
(頼むから“まとも”に寄せてくれ)
「……分かんないです」
「は?」
「そういうの、よく分かんないですし」
(……悪気が無いのが一番厄介なんだよな)
「……じゃあさ」
少しだけトーンを変える。
「嘘ついたの認めたら褒めてやるよ」
「僕、そんな嘘つきますかねぇ」
(こいつ、嘘ついた直後に忘れるタイプだ)
「じゃあ、自分が悪かったって認めたら褒めてやる」
「うーん……」
イヌは真面目に考える。
「僕が悪いことって、そもそもあります?」
沈黙。
(……)
バニーはゆっくり拳を握る。
(殴っていいか?)




