クズだけど
「そういえば、あの子の性格って……あれじゃないですか」
「ええ、少し捻くれてますよね」
バニーは、言葉を鉄筋コンクリートで包むみたいに選ぶ。
「それなのに、どうしてあの子……学生時代、あれだけ問題起こしてたのに人気があったと思います?」
「天才だから、でしょうか」
「……私は違うと思います」
一拍。
「あの子、本気で困ってる人を見ると、助けるんですよ」
バニーの脳裏に、いくつも浮かぶ。
何度も、何度も、助けられた記憶。
「……確かに」
(……あれ)
(黒崎からは、十年前の戦いバックレたって聞いたけど)
(……まぁ、命かかってるしノーカンにしてやるか)
「それに」
母親は柔らかく続ける。
「あの子、餌を用意すれば言うこと聞くじゃないですか」
「あー……」
(それはそう)
「だから、周りも可愛がるんですよ」
「……確かに」
(私も可愛がってる側だしな……)
「悪いところ“だけ”じゃないんです」
「ええ、それは分かってます」
バニーは頷く。
「じゃあ学生時代のお友達も、多そうですね」
「いえ」
あっさり。
「問題が多すぎて、卒業後まで関わろうとする人はほとんどいませんでした」
「……」
(まぁ……分かる)
「アハハ」
母親は軽く笑う。
「あの子、いいところもちゃんとあるんですよ」
「分かってますよ、お母さん」
「理解してくださってありがとうございます」
「……」
バニーは少しだけ視線を落とす。
「悪いところに目を瞑れば……」
一瞬考える。
「……瞑っても聞こえてきますけど」
「それでも、まぁ……いい奴ですよ」
「濁さないの、素敵ですね」
(いや、めちゃくちゃ濁してるつもりなんだけどな……)
少しの沈黙。
それから母親が、ふっと笑う。
「そろそろ、あの子が甘えてくる時間なので」
「あぁ……」
「またお話しましょう」
「はい」
――通話終了。
静寂。
「……」
バニーは小さく息を吐く。
「……あいつ」
ほんの少しだけ、口元が緩む。
そのとき。
扉の向こうから、声。
「ご主人様ーー」
「……はいはい」
バニーは立ち上がる。
「今行く」




