黒崎と朱音の会話
「ねぇ、黒崎」
声をかけてきたのは朱音。
「どうした、白崎」
黒崎はいつも通りの調子で返す。
「アンタさ、私らの知らない知り合い居るでしょ」
「ん?」
「ゲヒュール対策課で最強の人間」
「あー……」
黒崎は一瞬だけ間を置く。
「いるな」
「なんで仲良いの?」
「従兄弟だ」
「え!?マジで?」
朱音の目が丸くなる。
「血筋かぁ……強いのって」
「まぁ、強いな」
「紹介してよ。私も仲良くなりたいし」
「やめとけ」
即答。
「なんで?」
黒崎は少しだけ考える。
「母親の腹の中に、人間性置いてきたまま生まれてきた奴だ」
「ん?」
朱音は首を傾げる。
「あー、ゲヒュールに差し出した影響でしょ?」
「仕方ないわよ、そのくらい」
「……」
黒崎は軽く息を吐く。
「アイツ、契約しても何も変わってねぇんだよ」
「何差し出したの?」
「尊厳」
「それで変わらないのヤバくない?」
「ヤバい」
即答。
「悪気も無いんだよ、あいつ」
「悪意も差し出したの?」
「いや」
黒崎は少しだけ遠くを見る。
「それも最初から無い」
「……」
朱音が少しだけ引く。
「イマイチ想像つかないんだけど」
「分かりやすいの見せてやる」
黒崎が周囲を見回す。
「……あ」
ちょうど一人、女性職員が通りかかる。
「すみません、ちょっといいですか」
「あ、黒崎さん。大丈夫ですよ」
「悪い、今手離せなくてさ」
「――に仕事頼んできてくれない?」
一瞬。
空気が止まる。
「……え」
女性の顔が引きつる。
「すみません、それだけは本当に勘弁してください」
即答。
「……」
「すみません!」
そのまま早足で去っていく。
沈黙。
黒崎が肩をすくめる。
「な?」
「……エグ」




