イヌの良い所
イヌが仕事に出ている間。
バニーは一人、頭を抱えていた。
「……考えろ。アイツの良い所」
指を折る。
「寝顔が可愛い」
「寝言で好きって言う」
「寝ぼけて甘えてくる」
「寝るときに寝かしつけ頼んでくる」
「……」
一度止まる。
「クソッ、全部“寝てる時”じゃねぇか」
天井を見上げる。
「アイツ、夜しか可愛くねぇのかよ」
腕を組む。
「いや……あるだろ。昼でも何か」
「ゲヒュールから守ってくれる」
「…………」
沈黙。
「……マジでそれしか思いつかねぇ」
ソファに倒れ込む。
「え?私ほんとにアイツのこと好きなのか?」
しばらく考える。
「……よし、逆算だ」
「居なくなったら困る所」
「…………」
「……何一つとしてねぇ」
即答。
「……でも」
少しだけ間。
「居なくなってほしくないんだよな」
顔をしかめる。
「いや、さっき良い所出したし。トータルで見ればプラス……」
「…………」
「いや無理だわ。悪い所なら百個出せる」
「圧倒的マイナスだろこれ」
深く息を吐く。
「……私が寛大になればいけるか?」
「…………」
数秒。
「あ、無理だ。何パターンか想像したけど全部殺意湧いた」
間。
「……もう一回だけ考えろ」
「戦闘強い」
「家事できる」
「ゲーム付き合う」
「…………」
「……あいつ、勝ったら煽ってくるんだったな」
「普通に何回か殺しかけたわ」
沈黙。
――ガチャ。
ドアが開く。
「ご主人様ー!ただいまです!」
「……ん、おかえり」
「褒めてください。ちゃんと仕事してきましたよ」
「はいはい」
立ち上がって、軽く頭を撫でる。
「嬉しいです、ご主人様!」
満面の笑み。
「眠いんで、もう寝ましょうよ」
「そうだな」
並んで歩く。
「いつも通り、ギューして下さいね」
「分かったってば」
「あ、おやすみのキスも」
「……はいはい」
軽く応じる。
「えへへ」
バニーは小さく息を吐く。
「……」
「やっぱ無理だわ」
ぽつりと呟く。
「普通に好きだな、コイツ」




