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昔話
イヌがふと思い出したように口を開く。
「ご主人様、たまには面白い話でもしますか」
「なんだ、急に」
バニーは興味半分に顔を向ける。
「十年前、感情に変化ありませんでした?」
「ん……」
少し考える。
「言われてみれば、なんか変だった気はするな」
「ですよね」
イヌは淡々と続ける。
「ちょうどその頃からです。カジノが一気に増え始めたのは」
「……関係あんのか、それ」
「フクスはご存知ですよね」
「あぁ。トイシェン倒したやつだろ」
「はい。ヴェーラー――偏食種の強いゲヒュールとの戦いの結果です」
「……話が飛んでんな」
「フクスと四人の英雄が、そのヴェーラーを撃破しました」
イヌは一拍置く。
「ただ、そのフクス」
少しだけ声を落とす。
「過去に大罪を犯してるんですよ」
「……何した」
「人類から“欲望”を奪いました」
「は?」
バニーが眉をひそめる。
「マジかよ、それ」
「ええ」
あっさり肯定する。
「で、ヴェーラーとの戦いで瀕死になって、その欲望が解放された」
「それが今の世界、ってわけか」
「そういうことです」
バニーは小さく息を吐く。
「なるほどな……」
「つまり」
イヌが指を立てる。
「つまり?」
「僕がパチスロしちゃうのも」
一拍。
「フクスが欲望を解放したせいなんですよ」
沈黙。
「……」
バニーはゆっくり口を開く。
「責任転嫁すんな」




