イヌの気持ち
バニーがふと口を開く。
「なぁ……」
「なんですか、ご主人様」
「正直さ」
少しだけ視線を逸らす。
「私のこと、どう思ってる」
イヌは間を置かず答える。
「普通に好きですけど」
「……」
バニーはそのまま続ける。
「死んだ恋人と、重ねてるだけじゃねぇのか?」
一瞬。
イヌは吹き出した。
「ははっ」
「おい、真面目に答えろ」
「いや、だって」
まだ笑いが残っている。
「面白いこと言いますね」
「何がだよ」
イヌは肩をすくめる。
「別人なの、分かってますよ」
「……」
「顔は確かに似てますけど」
少しだけ視線を細める。
「性格も、言葉遣いも、全然違うじゃないですか」
「……そうか?」
「そうですよ」
あっさりと言い切る。
「ご主人様、ギャンブル好きで、口悪くて、すぐ暴力振るうし」
「殺すぞ」
「でも」
少しだけ声を落とす。
「そういうところも含めて、好きです」
「……」
バニーは何も言わない。
「あれ、照れてます?」
「うるせぇ」
少しだけ間が落ちる。
イヌがふと思い出したように言う。
「そうだ、面白い話していいですか?」
「なんだ」
「昨日、寝たふりしてたんですけど」
空気が止まる。
「……」
「ご主人様って」
わざとゆっくり続ける。
「僕が寝てる時、結構積極的なんですね」
「……」
「今日は一緒に寝ない」
即答。
「無理ですね」
「は?」
イヌはさらっと言う。
「ご主人様、僕に負けたじゃないですか」
「……」
「“僕が勝ったら毎日一緒に寝る”って約束」
少しだけ笑う。
「契約の強制履行ですよ」
「……」
バニーは顔をしかめる。
「最悪だな、お前」




