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ゲヒュール2  作者: ルイ
37/211

可愛い??

イヌがふと足を止める。

「お?黒崎、それお前の子供か?」

「いや。神代夫婦が用事あるらしくてな、その間預かってるだけだ」

黒崎の隣で、小さな影が一歩前に出る。

「こんにちは……」

「お、ちゃんとしてる。偉いな」

イヌが目を細める。

「可愛いじゃないですか」

「ワンちゃんたちも、あいさつして」

その一言で。

足元の影が、じわりと膨らむ。

黒い揺らぎが広がり、無数の気配が滲み出る。

「……は?」

イヌの声が一段低くなる。

「紫苑は突然変異体でな。ゲヒュールを手懐けて、影に飼ってる」

黒崎が淡々と補足する。

「可愛くねぇな」

「さっきまでの評価どこいった」

「いや、だってこれ――」

イヌは影を指差す。

「普通に怖いだろ」

「え?」

紫苑がきょとんとする。

「ワンちゃん、可愛いよ?」

影の奥で、何かがゆらりと揺れた。

「……いや、まぁ」

イヌは少しだけ視線を逸らす。

「可愛い……のか?」

「そうだよ。この前もね、変な人に声かけられた時、ワンちゃんたちが助けてくれたの」

「へぇ」

黒崎が相槌を打つ。

「いい子だな」

「うん。でもね」

紫苑は少しだけ首を傾げる。

「その後、その人――」

一瞬、間が落ちる。

「なんか、ずっとビクビクしてて動かなくなっちゃった」

沈黙。

「……」

イヌはゆっくり口を開く。

「可愛いの定義、見直した方がいいぞ」

「いやまぁ……」

黒崎が苦笑する。

「助かったのは事実だしな」

「まぁまぁじゃねぇよ」

イヌはため息をつく。

「普通に怖ぇわ」

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