夢の中
イヌは、もうすっかり寝息を立てている。
「……あーあ」
バニーは小さく息を吐いた。
「ほんと、毎日こうやってくっついて寝るよな、お前」
腕の中の体温が、やけに近い。
「私のこと、好きすぎだろ」
返事はない。
「……まぁ」
少しだけ視線を落とす。
「私も、好きだけどさ」
静かな部屋に、呼吸の音だけが残る。
「聞いてねぇか」
苦笑がこぼれる。
イヌの寝顔を、そっと覗き込む。
「……可愛いな」
指先が、触れそうで止まる。
「いつかさ」
ぽつりと落とす。
「名前で呼び合う関係とか、なれたらいいよな」
少しだけ間を置く。
「毎日、楽しいよ」
「お前といると」
その時だった。
「――、――」
小さな声。
夢の中の言葉。
「……え?」
バニーの動きが止まる。
もう一度。
「――、――」
聞き慣れない名前。
でも、分かってしまう。
「……っ」
息が詰まる。
「……はは」
乾いた笑いが漏れる。
「何、勘違いしてたんだろ」
視線を落とす。
「こいつが好きなの、私じゃねぇじゃん」
喉の奥が痛い。
「……あいつ、だろ」
死んだ恋人の名前。
「私に、重ねてるだけか」
分かってたはずなのに。
「……分かってたよ」
ぽろ、と雫が落ちる。
「分かってた……」
声が少しだけ震える。
「なのに、なんでだよ……」
指先が、わずかに震える。
「敵討ちも終わって」
「全部、終わったはずなのに」
「なんで、まだ――」
「……ご主人様」
「!?」
急に、腕が引き寄せられる。
寝たままの声。
でも、はっきりと。
「大好き」
「……っ」
息が止まる。
「こいつ……」
バニーは目を伏せる。
「ほんと、質悪いな」
苦く笑う。
「イヌとご主人様」
ぽつりと呟く。
「……このままで、いいか」
少しだけ、力を込めて抱き返す。
「それが、一番だろ」
目を閉じる。
「……私も、大好き」




