イヌの敗北
「また負けたぁー……」
バニーがテーブルに突っ伏す。
向かいで、イヌは淡々とカードをまとめていた。
「もう百回くらいやりましたよ、ご主人様。ババ抜き以外にしませんか?」
「じゃあ何するんだよ」
間髪入れずに返る。
「パチスロ」
「おいこら」
「いいじゃないですか。演出とか楽しいですし」
「私、店員やってたから分かるけどな。あれやってる奴、基本カモだぞ?」
「夢と希望が溢れてるじゃないですかぁ」
「……まぁいいや。気分転換だ」
――二時間後。
「十万勝ったわ」
バニーが椅子にふんぞり返る。
「マジか……まぁ、そういう日もあるか」
その横で、イヌは項垂れていた。
「ザッケンナカス……」
「いくら負けた?」
「六万です、ご主人様……」
「だから言っただろ。あそこでやめとけって。引き際だよ」
「取り返せると思ったのになぁ……」
「で、一番好きなギャンブルは?」
「パチスロです」
「一番向いてねぇだろ。引き際分かってねぇんだから」
「明日取り返すのでプラマイゼロです」
「あー……駄目だこいつ」
バニーはため息を吐いた。
「そういえば」
イヌが顔を上げる。
「なんで急にババ抜きなんですか?」
「……インスティンクトの話、しただろ」
バニーは軽く指を鳴らす。
「習得方法は大きく二つ。ゲヒュールにデカい対価払うか――」
「人間離れした読心術、ですよね」
「そう。それ」
「まさか、やる気ですか?」
「やろうとはしてる」
「無理無理」
「ウザ」
間髪入れずに返す。
少し間。
バニーは軽く首を傾げる。
「ていうか、なんで使うとゲヒュールに近づくんだ?」
「そこが分かんねぇんだよな」
「……あぁ、それ」
イヌはあっさり言った。
「人間もゲヒュールも、そんなに違いませんよ?」
「は?」
「人間の成れの果てがゲヒュールなので」
バニーの眉がわずかに動く。
「初耳だな」
「ゲヒュールは精神で体を作ってますけど、元は同じですし」
「……ふーん」
興味なさげに返すが、視線だけがわずかに落ちる。
「明日もババ抜きするか」
「いやパチスロしましょうよ、ご主人様」
「お前が破産するから駄目」
「えー……」




