情報を餌に
「おい、勝負しろ!」
「なんですか、お客様?」
「いいから勝負しろって……テメェに勝てば借金がチャラになるんだよ」
一瞬、間。
「……私のメリットは?」
「ねぇよ!!」
「ご主人様、受ける必要ありません」
「条件次第だな」
視線を外さずに言う。
「一つだけ質問に答えてください。それで受けます」
「なんだよ……」
「その借金、どこから来たんですか?」
「……言えない」
「理由は?」
「それも……言えねぇ」
(……隠してる)
(トイシェンか? いや――)
(命令なら、ここまで歪まない)
(“言えない”じゃなく、“言いたくない”に近い)
「分かりました」
軽く息を吐く。
「私が勝ったら、全部話してください」
「……分かった」
(どうせ破る気だろうが)
(契約で吐かせればいい)
「ご主人様、僕が代わりに――」
「そいつはゲームに触れさせるな」
即答。
「……何故ですか?」
「匂いが違う」
短く言う。
「普通のカモじゃない」
「ご主人様」
声が少しだけ低くなる。
「借金は嘘です」
「……あ?」
「トイシェンのやり口と、あの焦り方」
「人質、取られてます」
「……トイシェンのメリットは?」
「今回は薄いだろ」
「遊んでるんですよ」
淡々と返す。
「情報を餌にして」
「本物かどうかも分からない」
「勝っても、意味があるとは限らない」
沈黙。
「……やっぱお前」
わずかに口元が歪む。
「私のこと舐めてるよな」
「勝つよ」
「……はい」
イヌは小さく笑う。
「頑張ってください」




