動かないヤクモ
「ヤクモ動かねぇー」
黒崎がぼやく。
「誰それ?」
イヌが気のない声で返す。
「五千年生きてる悪党だと思えばいい」
「へぇー」
「……突っ込まないのか」
「どうでもいいし」
即答。
黒崎は小さくため息を吐く。
「まぁ、そいつが十年動き見せてないんだよ」
「長生きしてるし、暇なんじゃない?」
「それもあるかもだが……」
少し間。
「なんかあんの?」
「計画の準備してる可能性もあるだろ」
「そんとき考えればよくない?」
軽い。
黒崎は眉を寄せる。
「上層部と繋がってるかもしれないしな。実際、前に圧もかけられてた」
「あー、それなら」
イヌが思い出したように言う。
「裏切り者探す極秘任務あったわ」
「……は?」
「上が違和感覚えて、ダメ元で調べろってやつ」
黒崎の表情が固まる。
「一人、繋がってたからさ」
さらっと続ける。
「情報引き出して殺した」
「お前かよ!?」
「金払い良かったわー、あれ」
イヌは満足げに言う。
黒崎は頭を押さえた。
「……優秀なのが一番タチ悪いな、お前」
「でさ、次の日めっちゃ良いことあって」
「何が?」
「パチンコで四万発出た」
「お前が!?マジかよ」
「朝から閉店まで突っ込んだからな」
「……いくら使った」
「二十万」
一拍。
黒崎が固まる。
「……それって」
イヌは気にした様子もなく続ける。
「四万発出たのマジでラッキーだったわー」
沈黙。
黒崎はゆっくりと顔を覆った。
「……計算、出来るか?」
「出来るけど?」
「ならもうちょい考えろ」




