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何処が好き?
「ねぇ、――」
イヌが何気なく声をかける。
「なぁに。あ、ちゃんと“ご主人様”でしょ?」
「はーい、ご主人様。」
少しだけ間。
「ご主人様はさ、僕のどこが好きなの?」
恋人はくすっと笑う。
「どこだと思う?」
「顔の良さと誠実さかなー。」
得意げな顔。
「ふふっ、違いまーす。」
「えー、なんでぇ。」
少しだけ拗ねた声。
「じゃあさ、ワンコ君は?」
恋人が軽く覗き込む。
「私のどこが好き?」
「全部好き」
即答。
間も迷いもない。
「……嬉しいこと言うなー。」
少しだけ目を細める。
「で、ご主人様は?」
イヌが覗き返す。
恋人は少しだけ考える素振りをしてから、
ゆっくりと手を伸ばす。
頭を撫でる。
「えへへ」
自然と顔が緩む。
そのまま、イヌは体を預けるように抱きついた。
恋人は何も言わない。
ただ、もう一度だけ優しく撫でる。
「……まぁ、そういうことかな」
「ん?」
イヌは首を傾げる。
でも、その意味は分からないまま。
ただ、撫でられているのが心地よくて、
それ以上は何も考えなかった。




