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『断崖令嬢 ―The Cliff Chronicle―』 ― 高所恐怖症だった悪役令嬢、世界の崖を制す ―  作者: 南蛇井


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緊張の昂り:レミルの視界発作

アデリアが端末を操作しながら、短く告げた。

「隔絶区画へ移動するわ。準備は――」


「……はい、わたし、だいじょ――」


言い終える前だった。


レミルの視界の端に、ふっと白い粒が散った。

埃が光に反射しただけ――そう思うより早く、粒は増えた。

一つ、二つではない。

視界の縁を縫うように、連なり、溢れ出し、白く飽和していく。


(……え?)


最初はただのノイズ。

だが、次の瞬間にはもう“形”になりかけていた。


まばらな粒が、軌跡を引いて滑る。

まるで見知らぬ誰かが、視界に直接細い線を描き込み始めたように。


レミルは息を飲んだ。

胸に、冷たい衝撃が落ちる。


「アデ……リア、さん……?」


言葉が途中で切れた。

返事の続きは、もう喉のどこにも見つからなかった。


粒は、もう粒ではなかった。


視界の端でちらついていた白点は、

いつのまにか細い「線」となり、そこからさらに――

糸のように連続する“描線”へと変わっていた。


揺らぎは光学的ではない。

光の反射でも、残像でも、目の錯覚でもない。

もっと近い、もっと内側――

レミル自身の視界の“表面”に、直接書き込まれているような質感だった。


(……誰かが、書いてる……?

 これ、私の目じゃなくて……頭の中……?)


糸状の軌跡は、視線を動かしても追随しない。

レミルがどこを見ようとも勝手に揺れ、独自の方向へ流れていく。


まるで、レミルの脳が「観測している側」ではなく、

“観測されている側の映像”を拾っているかのように。


胸が強く脈打つ。

その鼓動に合わせて糸が震える。


世界が、二重に重なって見え始めていた。



糸状の軌跡は、やがて“目的”を得たかのように動き始めた。


最初は無秩序に漂っていた線が、

ふいに、書架の一角へと吸い寄せられる。


開きっぱなしの古い資料。

壁に貼られた標識。

アデリアの手にあるノート。


――そのすべてに共通するもの。


「文字列」。


レミルの視界の糸は、ひとつまたひとつと文字の縁に沿って這い、

まるで文字の輪郭を“なぞり読み取る”ように震えた。


行間を渡り、縦画をすべり、

曲線をたどり――

次の行へ、次の行へ。


文字は光のように淡く反転し、

黒い印字が裏返されて“内側の輝き”だけが浮かび上がって見える。


(……文字じゃない……

 これ、言葉の形じゃない……

 “信号”……? 流れてる……?)


レミルの目には、

そこにあるはずの言語がすべて「符号化された列」に変換され、

糸がその列を読み解いていくように見えた。


――そう。

まるで**“第四層の観測者が、レミルを経路として情報を取得している”**かのように。


糸状の軌跡は、やがて“目的”を得たかのように動き始めた。


最初は無秩序に漂っていた線が、

ふいに、書架の一角へと吸い寄せられる。


開きっぱなしの古い資料。

壁に貼られた標識。

アデリアの手にあるノート。


――そのすべてに共通するもの。


「文字列」。


レミルの視界の糸は、ひとつまたひとつと文字の縁に沿って這い、

まるで文字の輪郭を“なぞり読み取る”ように震えた。


行間を渡り、縦画をすべり、

曲線をたどり――

次の行へ、次の行へ。


文字は光のように淡く反転し、

黒い印字が裏返されて“内側の輝き”だけが浮かび上がって見える。


(……文字じゃない……

 これ、言葉の形じゃない……

 “信号”……? 流れてる……?)


レミルの目には、

そこにあるはずの言語がすべて「符号化された列」に変換され、

糸がその列を読み解いていくように見えた。


――そう。

まるで**“第四層の観測者が、レミルを経路として情報を取得している”**かのように。






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