第六十二話:アキラ、“息継ぎ”で女の仕草を落として♡
第六十二話:アキラ、“息継ぎ”で女の仕草を落として♡
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その女──真希さんは、隣に住んでいる。
夕暮れのバス停。誰もいないのを確かめて、ひとり「ふぅ」と息を吐いた。
けれどその息継ぎが、妙に柔らかく、胸の奥を撫でるような甘い吐息になっていた。
耳に届く前に空気が頬をかすめ、恋人の指先に触れられた後の余韻を漂わせていた。
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「……い、今の……ため息……俺の、なのか……?」
アキラ(仮名・29)。事務系の中堅社員。
真面目さが取り柄だったのに、最近は──
「そのため息、女みたいに色っぽいですね」と笑われることが増えていた。
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【バス停】
・時刻表の端に「“息は押し出さず、抜くと女♡”」のメモ
・ベンチの背に残った、肩を預けたときの小さな爪跡
・券売機のボタンに、力強さではなく指で撫でるような浅い摩耗痕
「……俺……こんな息づかい、した覚え……」
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【オフィス会議室】
・ホワイトボード隅に「“声より、呼吸を混ぜる♡”」の赤文字
・水差しのグラスに、甘え声を含んだ泡の痕
・椅子の背に、深くではなく女の子みたいに浅く腰掛けた皺
「……発表の時……俺、息で区切ってた……?」
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【下着】
・ミントグリーンのレースブラとショーツのセット
・呼吸に合わせ布地が微振動し、吐息を色づける“息感知仕様”
・タグには「BreathLace──“息継ぎで、女が漏れる♡”」の刺繍
「……これ着けてると……息ひとつで……身体まで……女になる……」
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そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、とろみ素材のブラウスに黒のペンシルスカート。
吐息を含む声をひとつ零すだけで、室内の空気ごと甘く染め変えてしまうほどだった。
「ふふ……男の息継ぎって、本来は荒く切れるものよ♡」
「ち、違う……俺は、普通に呼吸してただけで……」
「でも──さっき会議で“はぁ……”って区切った瞬間、完全に“彼女の吐息”だったわ♡」
「やめろ……そんなこと……言うな……っ」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「吸うたびに落ちて、吐くたびに女になる……覚悟はできてる?♡」
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【黒服さん突入】
シュバッ!
呼吸解析マスクを装着した黒服三名が突入!
黒服1「呼気周波数、完全に女性型へシフト!」
黒服2「吐息混入率95%突破! これはもう“甘え呼吸”だ!」
黒服3「確認! ため息ログ保存完了!──再生すると完全に彼女だな」
アキラ「や、やめろっ……! 消せっ……俺はただ息を……してただけで……!」
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【個体データ】
識別コード:No.036(アキラ)
呼吸変換率:女性型域に到達
吐息混入率:78%(日常発話)
装着済み:BreathLaceブラ&ショーツセット
備考:「……息継ぎだけで……胸が……女みたいに震える……」本人つぶやきあり
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【数日後】
アキラは、息をするたびに自分の呼吸が女めいていくのを恐れていた。
声よりも先に、柔らかな吐息が零れてしまう。
「はい」と答える前に、胸から甘さが洩れ、誰かを誘う響きになっていた。
同僚から「落ち着いた声ですね」と微笑まれ、否定できずに頬を染めてしまう。
──呼吸は、“整えるもの”ではなく、甘く零れ落ちる女の証”に変わっていた。
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真希さんは、アキラの頬に指を添え、吐息を耳孔にすべり込ませるように囁いた。
「ね……その息継ぎ、もう男には戻れないわ♡」
「次は……寝息で証明しなさい。夢の中でも女でしかいられないって……♡」
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真希さんの手帳には、流れる筆跡でこう記されていた。
“No.037:ユウト(仮)──笑い方、完全に“彼女”だった♡”
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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「ふふ……その“息継ぎ”、もう女の吐息だったわ♡」




