第六話:カナメ、声が甘くなる昼下がり♡
第六話:カナメ、声が甘くなる昼下がり♡
──♡──
その女──真希さんは、隣に住んでいる。
その日のデスクの上には、見覚えのないピンクのBluetoothイヤホンが置かれていた。
マイク部分にだけ、薄くハートのシールが貼られている。
触れると、ふっと甘い香りがした──まるで“女の子の声”が染みついているかのように。
──♡──
「……あれ、なんか音が……やたら優しい……?」
河合カナメ(23)、新人声優志望。
収録前、自分の声を確認していたら、モニター越しに“別人の声”が聴こえた。
しかも、それが──やたら可愛くて、艶っぽい。
(えっ……これ、俺の声!?)
──♡──
【ベッドサイド】
・置かれていたスマホには「ボイス補正ON」の表示。
・“うるツヤ女子ボイス”というプリセットが勝手に適用されていた。
・隣にあったイヤホンケースには、「これであなたも“声フェム”♡」のシール。
「誰がこんなん設定した……いや、てかこれ……自分で……!?」
──♡──
【ポーチの中】
・小さなリップ型の携帯録音マイク。
・説明書に「リップノイズも美しく♡」の文字。
・USBポートには、すでに録音済みファイルの名前が──『あたし、かわいくなっちゃった♡』
「うわ……これ、俺が言ったの……か……?」
──♡──
【下着】
・普段着のジーンズの下に、こっそり履いていたシームレスショーツ。
・ミントピンクのサテン素材で、ローライズ仕様だった。
・タグには「Silent Voice Lingerie」のロゴが小さく光っていた。
「くそ……気づかないうちに、こんな……」
──♡──
そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、サーモンピンクのシャツに、白のフレアスカート。
スマホを耳に当てたまま、唇の端でふっと笑った。
「ふふ……“女の子の声”って、耳から変わるのよ♡」
「えっ!? いや、俺そんなつもりじゃ──」
「でもね、もう“かわいく喋る癖”、ついちゃってるでしょ?♡」
「いや、やめっ……ほんと、なんで知ってるの!?」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
──♡──
【黒服さん突入】
ズバァンッ!!
突然、窓のブラインドが破れ、黒服たちが逆光の中から飛び込んできた!
黒服1「対象、音声“自己補正”状態。羞恥反応に遅れあり」
黒服2「ボイス・ランジェ共鳴値95%、フェミナイズ安定推移」
黒服3「女声発話記録あり。精神順応度“声から自己同一”へ」
カナメ「ちょっ、声だけのつもりだったんだよぉぉおおぉっ!!」
──♡──
【個体データ】
識別コード:No.006
•初期反応:収録用モニターから“自分の甘い声”に動揺
•音声補正:無自覚プリセットON、語尾にハート率上昇中
•下着選好:サテン製ローライズ、色名“ミントピンク”を口に出して読んでいた
•観察結果:「ASMR録音後、自分の声に『……かわいすぎでしょ私』と呟いていた」
──♡──
【数日後】
カナメは自分の声を録音するたび、自然と“甘い響き”で話すようになっていた。
女性フォロワーが増え、「声かわいい♡」とDMが届くたび、口元がゆるんだ。
気づけば、ファン向けASMRを“趣味”で投稿していた。
唇にリップを塗りながら、「今日の声、うまく出るといいな」と願っていた。
そして──もう、声だけじゃなく、話し方そのものが“女の子の声”になっていた。
──♡──
真希さんは、マイクを指先でくるくると転がしながら、いたずらっぽく目を細めた。
「ね、“かわいい声”って、耳から心に入ってくるのよ」
「……ふふ、もうすっかり“女の子の声”になってたわね♡」
──♡──
真希さんの手元のノートには、“No.006:カナメ(仮)”の文字が、そっと朱色で書き足されていた。
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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真希さん、次に“囁かれる声”になるのは──あなたかも?