第五十五話:リップグロスで、“お願いの声”が変わった♡
第五十五話:リップグロスで、“お願いの声”が変わった♡
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その女──真希さんは、隣に住んでいる。
玄関の鏡台に置かれていた、小さなチューブ。
その先端には、薄桃色のグロスがわずかに残っていて──
まるで、“誰かに見せたくて塗った”跡のようだった。
──♡──
「……なんで俺、こんな艶……出してたんだ……?」
ユウキ(仮名・19歳)。地方から出てきた大学一年生。
最近、“口元の乾燥”が妙に気になっている。
ついでに、言葉を発するときの“声の抜き方”まで、柔らかくなっていた。
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【洗面所】
・リップグロスのチューブが1/3ほど減っている
・鏡の端に貼られたメモ「“お願いする声”は、唇の艶から♡」
・下唇にだけうっすら残る、微かなピンクのきらめき
「え、俺……塗ってたの……? しかも下唇だけって……そんな塗り方、誰に教わった……?」
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【机まわり】
・パソコン横のペン立てに、さりげなく挿されたグロス
・ブラウザ履歴に「男でも似合う色つきリップ」
・ボイスメモに録音された、“女の子っぽくお願いする声”が3ファイル
「やっっべ……再生すんな! こんな声、俺じゃねぇぇ!!」
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【下着】
・ライトピンクのノンワイヤーブラに、ふわりと香るストロベリーグロス
・グロスの香りが“胸もと”にうつるよう、チューブに工夫された斜めライン
・タグには「GlossKiss──“艶で誘うのは、声より先に♡”」
「こんな香り……胸から香らせるって……っ、なんでそんな発想が俺に……!」
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そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、シアー素材の白ブラウスに、ルビーレッドのスカート。
ふとした笑みのたび、唇にきらめく艶が揺れて──その声まで、やわらかく聴こえた。
「ふふ……リップってね、“見せる”だけじゃないの。“聞かせるため”にも塗るのよ♡」
「お、お願いって……そんな、“わざとらしい声”で言うつもりは……」
「でもね……“お願いの声”って、艶のある唇からしか出てこないものなの♡」
「ちがっ……俺は……俺は別に、誘うつもりなんて……っ」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
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【黒服さん突入】
バシュゥゥッ!!
玄関の姿見がスライドし、黒服三名がリップ音声データ&視覚解析を開始!
黒服1「グロス艶感、女声反応時の反響率を増幅!」
黒服2「“お願い”というワードの発声時、声帯ピッチが女性帯域へ遷移!」
黒服3「唇の艶と香りの同期により、“フェミニン認識”を聴覚が先行!」
ユウキ「や、やめろぉぉぉっ! 俺の“お願いの声”なんて、記録すんなぁぁぁっ!!」
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【個体データ】
識別コード:No.055(ユウキ)
グロス塗布回数:計11回(うち下唇単体8回)
音声記録:「“お願い……”×3回、いずれも女声帯域」
装着済み:GlossKissストロベリー(艶・香り同調モデル)
備考:「……声、柔らかいほうが……なんか、通りやすいんだ……」発言あり
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【数日後】
ユウキは、唇の乾きに敏感になっていた。
“保湿のため”と塗っていたはずのグロスが、いつしか“声を整える”手段に変わっていた。
電車で誰かに席を譲るときも、レジで「お願いします」と言うときも──
無意識に、やわらかい声を選んでいた。
……それはもう、“男の喉”では出せない音だった。
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真希さんは、指先でグロスのチューブをくるくると回しながら、ささやいた。
「唇ってね……“誰かに触れてもらう準備”の場所なの♡」
「次は……ピンクの傘にしましょうか。“女の雨宿り”って、見た目から始まるのよ♡」
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真希さんのリストには、こう記されていた。
“No.056:レン(仮)──“傘の色”で、足取りが変わってた♡”
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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「艶ってね……“喉より先に、女を育てる”のよ♡」




