第五十一話:カイ、涙が出たら、もう女の子だった♡
『隣の真希さん』
第五十一話:カイ、涙が出たら、もう女の子だった♡
──♡──
その女──真希さんは、隣に住んでいる。
夜の帰り道。ふと見上げた空に、月がやけにきれいだった。
別に、なにかあったわけじゃないのに──
目の奥が、勝手に熱くなった。
──♡──
「……なんで……俺、こんな……泣きそうになってんだよ……」
カイ(仮名・22歳)。大学生。理系で感情には鈍いほうだと思っていた。
けれど最近、“ふとした瞬間”に、心がふわっとほどけるようになっていた。
優しい言葉、綺麗な景色、あたたかい香り──そして、涙が出る。
──♡──
【部屋】
・机の上には、好きな詩のフレーズを書き留めた小さなノート
・その脇には、目元用の保湿ジェル
・メモには「涙って、こぼれていいものなんだって……♡」と走り書き
「……これ……自分で書いたのか……? 俺……泣いて、嬉しかったってこと……?」
──♡──
【バスルーム】
・アイメイク用のポイントクレンジング
・目元を冷やすためのジェルパック
・鏡には「涙で綺麗になる目元ライン♡」という文字入りのシール
「……うそだろ……俺、涙が……綺麗になれるって思ってる……」
──♡──
【下着】
・薄いベビーブルーのウォータードロップレースショーツ
・腰の両サイドには、涙を模したドロップ型の透かし飾り
・タグには「TEARMUSE──“こぼれる感情”が女の証明♡」
「これ、つけてると……泣きたくなるほど……気持ちよくて……なんか、やさしくなれる……」
──♡──
そこに現れる、隣の女──真希さん。
今日の真希さんは、白いニットのロングワンピに、涙のようなパールピアス。
目元がふんわりと潤んでいて──その横顔は、触れたくなるほどやさしかった。
「ふふ……女の子ってね、“涙”をこぼすことで、愛されるのよ♡」
「ちがっ……! 俺、べつに……泣いたわけじゃなくて……」
「でも、さっき──月を見てたとき……目が、すこし濡れてたわ♡」
「……見てたのかよ……」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
──♡──
【黒服さん突入】
コツン……
足音を忍ばせた黒服三名が、アイセンサースキャナを装着して静かに侵入。
黒服1「涙腺感度、感情波形と連動して自律開放モードへ!」
黒服2「眼球潤滑率、女性平均値を超過──フェム涙型確認!」
黒服3「泣きたい衝動、自覚前から高位発動中ッ!」
カイ「や、やめろっ……! 俺……泣いてなんか……ないっ……!」
──♡──
【個体データ】
識別コード:No.041(カイ)
涙腺開放感度:97.2%(感情刺激時)
情緒変調率:+62.8%(自己共感・被写性感度向上)
装着下着:TEARMUSE(感情共鳴型ドロップレース設計)
備考:「……涙が出るたび……わたし、ちゃんと女の子になってる気がする……」と呟きあり
──♡──
【数日後】
カイは、映画の予告編だけで目元が熱くなるようになっていた。
感動じゃなくて、“なにかが流れる”という事実そのものが気持ちいい。
泣くことが、こわくなくなった。
涙が伝うたび、自分が“柔らかくなっていく”のを感じる。
そして──今日もまた、そっと頬を撫でるように拭った。
──♡──
真希さんは、その頬の涙を指先でぬぐって、微笑んだ。
「涙ってね……“出せる”ようになった時点で、もう女の子なの♡」
「次は……お腹、あたためてみましょう。“守りたくなる柔らかさ”、仕込むから♡」
──♡──
真希さんの手元のリストには、こう記されていた。
No.042:ユウト(仮)──お腹に手を当てたら、守りたくなった♡
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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「涙がこぼれるってね……女の子になる準備が、できたってことなのよ♡」




