第三十六話:ミナト、“女の背中”が語ってた♡
第三十六話:ミナト、“女の背中”が語ってた♡
──♡──
その女──真希さんは、隣に住んでいる。
ベッドサイドの椅子に、なめらかな白シャツがかけられていた。
肩の縫い目には、わずかに内巻きになったラインが残っている。
──まるで“女の背中”が、そこに収まっていた名残だった。
──♡──
「……こんなシルエット、俺が着るわけないだろ……」
ミナト(仮名・24歳)。大学院生。地味で目立たない存在……のはずだった。
だが最近、ゼミの友人から「背中、きれいになった?」と囁かれるようになった。
──姿勢が整って、肩甲骨がうっすら浮くようになったのは、気のせいじゃない。
──♡──
【デスク周辺】
・猫背矯正バンドと、ストレッチガイドのプリント
・「肩甲骨を寄せると“女の色気”♡」と書かれた付箋
・パソコンには「開いた背中を美しく見せるシャツ」検索履歴
「は……? え、これ……俺? あれ? 確かに背中の開き、最近ちょっと気になって……」
──♡──
【洗面所】
・“ボディオイル・背中用”と書かれた細長いスプレー
・壁に貼られた「肩甲骨エステでモテ背中!」の雑誌切り抜き
・濡れたタオルには、細く浮き出た背中の筋の跡が
「こんなとこまで……気にしてるわけ……ないって……いや、たしかに塗ってたけど……」
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【下着】
・ホワイトレースのノンワイヤーブラ+背中開きキャミソール
・布地は極薄のシルク混、背筋ラインが浮き出るカッティング
・タグには「BackMuse──“語れる背中”をあなたに♡」
「……こんなの……男が着るわけ──いや、でも、これ着たら……“後ろ姿”、もっと綺麗になる……?」
──♡──
そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、背中が大きく開いたニットワンピース。
振り向かずに微笑んだその姿は、まるで“後ろ姿だけで誘っている”ようだった。
「ふふ……背中って、いちばん“素直な色気”が出るのよ♡」
「ちょ、ちょっと……別に、俺は背中なんて……!」
「でも……ほら、今のあなた、“肩甲骨”、すごく綺麗に見えてる♡」
「……っ! い、今は関係ないだろ!」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
──♡──
【黒服さん突入】
ガシャン!!
窓から降下した黒服三名、背面スキャナで即スキャン!
黒服1「肩甲骨アーチ、女子モデル比110%曲線出現!」
黒服2「背筋ライン、完璧にレースキャミ対応済み!」
黒服3「“後ろ向き微笑ショット”自撮りデータ、保存済み!」
ミナト「バカっ、やめろぉっ!! 俺の背中、見せんなぁっ!!」
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【個体データ】
識別コード:No.036(ミナト)
背中フェロモン指数:88.2
肩甲骨の開閉バランス:女子モデル平均超
装着済み:BackMuseセット(背中視線誘導型)
備考:「俺の後ろ姿……たしかに、女だったかも……」発言あり
──♡──
【数日後】
ミナトは、背中の開いた服を無意識に選ぶようになっていた。
写真に映った自分の“後ろ姿”が、なんだか美しく見えた。
鏡の前では、自然と肩をすっと引いて、柔らかなラインを作るようになった。
背筋にすっと指を這わせたとき、ゾクリとするような甘い感覚が走る。
──“背中”はもう、自分の“武器”になっていた。
──♡──
真希さんは、後ろからそっと背中に手を沿わせて、囁いた。
「ふふ……次はね、“後ろから抱きしめたくなる背中”を目指しましょ♡」
「肩甲骨、もう少し寄せて──そう、そのまま♡」
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真希さんの手元のリストには、こう記されていた。
“No.037:ユウト(仮)──後ろ姿、恋され始めてる♡”
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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「ね……背中って、嘘つけないのよ。女の色気、ぜんぶ出ちゃうんだから♡」




