第三十五話:ナギ、“ピンクチーク”で頬を染めて♡
第三十五話:ナギ、“ピンクチーク”で頬を染めて♡
──♡──
その女──真希さんは、隣に住んでいる。
洗面台に置かれたコンパクトミラーが、ほんのり甘くきらめいていた。
開いたままの中には、ピンクのチークと、なだらかなブラシ跡。
──それはまるで、“誰かの頬”がそこに触れていたような記憶だった。
──♡──
「……え、俺……塗った? そんなバカな……」
ナギ(仮名・20歳)。美大生。メイク講義のモデル探しを口実に、つい“自分の顔”で試してしまうことが増えていた。
最近は「血色チークの位置」や「頬骨の丸み」に、無意識に指が伸びる。
──それでも、まだ「自分が変わってる」とは、認めたくなかった。
──♡──
【洗面所】
・ピンク系チーク3種+専用ブラシ
・鏡の端に貼られた「頬の丸み=かわいさ♡」という付箋
・タオルには、うっすらと頬を拭った形のファンデ跡
「は……? なにこの跡……いや、知らんし……え、てか……俺の肌、こんな柔らかかったっけ……」
──♡──
【部屋まわり】
・化粧ポーチのファスナーが、少しだけ開いたまま
・モニターに映る、メイク動画の「男の娘メイク」タグ
・ティッシュの山の中に、ピンク色の頬の自撮りが混ざっていた
「え……? これ……俺、なの……? うそ……この顔……“かわいくね”?」
──♡──
【下着】
・ピンクのノンワイヤーブラ+フリル付きショーツのセット
・布地はふわっとしたチュール、胸元にはリボンモチーフ
・タグには「CheekMe♡──“頬染め女子”専用ランジェリー」
「な……なんだよこれ……似合うわけ……いや、ちょっと待って……意外と、アリ……?」
──♡──
そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、白のシャツワンピースに、赤いルージュ。
頬にほんのりチークを乗せて、色香と可憐さの境界線を揺らしていた。
「ふふ……ね、頬って、一番“乙女”が滲む場所なのよ♡」
「ちょっ……おれは別に、たまたま試しただけで……!」
「でも、鏡の前で、微笑んでたじゃない♡ ふわっと、可愛い角度で」
「う……いや、それは……クセというか、なんというか……!」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
──♡──
【黒服さん突入】
バァン!!
チーク粒子スキャンを手に、黒服三名が強制突入!
黒服1「頬の紅潮角度、恋する女子と完全一致!」
黒服2「笑顔時のチーク移行範囲、乙女曲線判定!」
黒服3「自撮り“ほほ杖ポーズ”、可愛さ平均値140%越え!」
ナギ「やめろおお!! それはメイク研究で! 俺、研究対象でぇえっ!!」
──♡──
【個体データ】
識別コード:No.035(ナギ)
頬の血色率:91.4%(チーク2種使用)
笑顔時の変化:女子高校生比で+0.9倍の“萌え率”
装着済み:CheekMeランジェリーセット
備考:「自分でチーク塗って……なんか……キュンってした……」発言あり
──♡──
【数日後】
ナギは、講義の準備という名目で、自分の顔にほんのり色を差すようになっていた。
メイクブラシを持つ手が、自然と“可愛くなれ”と囁いている気がした。
撮影の参考にと自撮りした画像は、ほとんどが“頬を染めた顔”になっていた。
鏡の中で見つけたその笑顔は、もはや「女子の表情」そのものだった。
──頬にチークがのるたび、ナギは“女の子の顔”に近づいていく。
──♡──
真希さんは、頬を指でなぞりながら、甘く囁いた。
「ふふ……次はね、“涙袋”の影、入れてみましょうか♡」
「もっと甘えて見えるように、ね♡」
──♡──
真希さんの手元のリストには、こう記されていた。
“No.036:カケル(仮)──涙目、すでに“守ってあげたい顔”♡”
完──“今日もまた女にしておしまい♡”




