第二十九話:アオイ、“視線の外し方”で女の仕草に堕ちて♡
第二十九話:アオイ、“視線の外し方”で女の仕草に堕ちて♡
──♡──
その女──真希さんは、隣に住んでいる。
部屋の隅に立てかけられた、全身鏡のフチに、ひとつの付箋が貼られていた。
「“目をそらす”ときが、いちばん女の子♡」
その文字の下には、顔の向きと瞳の動きが描かれた、ちいさなスケッチ。
──その視線は、たしかに“誰かを意識して逸らした”ものだった。
──♡──
「……俺……こんなふうに、逸らしてたっけ……?」
アオイ(仮名・22)。美大生、専攻は映像演出。
モデルや女優の“目の動き”を観察するのが癖だったはずが──
最近、なぜか、自分の視線が“逸らすため”に動いているような感覚があった。
──♡──
【デスク・モニター前】
・参考資料として置かれた「視線トレーニングDVD」
・マウスパッドの下に隠されていた「“そらし目レッスン♡”」のプリント
・録画映像に映っていたのは、自分が“誰かを見るフリをして、逸らす”瞬間だった
「……これ、俺が……? うそ、完全に“見られてる前提”の動き……じゃん……」
──♡──
【洗面台】
・鏡の横に貼られた「“目を合わせずに気づかせる”視線角度」メモ
・その下に「男は見据え、女は逸らす──ね?」と書かれた赤い文字
・洗面ボウルに垂れていた涙のような水滴が、頬をなぞった跡のようだった
「やめろよ……俺、こんな目線……してたわけ……ない、はず……」
──♡──
【下着】
・ラベンダー色のアイマスク型チョーカーと、サイドリボンショーツのセット
・目を逸らしたときに、頬が赤くなるよう仕立てられた“フェイスライン設計”
・タグには「ShyEyes──“逸らす視線が、いちばんかわいい♡”」と金糸で刺繍されていた
「やば……これ、つけて鏡見ると……完全に……視線、逸らしたくなる……」
──♡──
そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、スモーキーパープルのカーディガンに、うなじを見せたポニーテール。
アオイの顔を見つめながら、ゆっくりと首を傾ける。
視線の圧を、静かに“外される側”に流し込んでいく。
「ふふ……ね、“目を合わせられない”って、それだけで可愛いのよ♡」
「ちょ、違う……俺は、ただ……カメラの前で自然に見せたくて……!」
「でも、さっきの録画……“意識して逸らした目”、とってもきれいだった♡」
「……やだ……もう、それ、言わないで……っ」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
──♡──
【黒服さん突入】
ストンッ……!
天窓から静かに降下した黒服三名が、目線解析スキャンを照射!
黒服1「視線回避パターン、フェム型“外し目”に一致!」
黒服2「瞳孔開度・照準ずれ率:女性反応モデルに移行中!」
黒服3「記録映像内、目線逸らし+頬染め動作7回──完全一致!」
アオイ「っ……やめて!!俺はただ、“演出”として……やってただけ……だって……!!」
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【個体データ】
識別コード:No.029(アオイ)
視線回避傾向:外し目7:見据え目3(反転段階)
視線と頬の反応同期率:91.6%
装着済み:ShyEyesセット(チョーカー&ショーツ)
備考:「目を合わせない方が……可愛く見える気がして……」本人メモより
──♡──
【数日後】
アオイは、誰かと話すとき、すこしだけ“視線を外す”ようになっていた。
その瞬間、頬に走る微かな緊張が、なぜか快感に変わるのだった。
モニターに映る自分の横顔が、どこか“女優っぽく”感じられるようになった。
目線は、見られるための武器じゃなかった。
──もう、“逸らした先に残る余韻”こそが、彼を女にしていた。
──♡──
真希さんは、アオイの瞳の横をなぞりながら、ささやいた。
「ね、“逸らした目”って──見つめるよりずっと艶っぽいの♡」
「次は、“伏し目がち”で微笑む練習、してみましょうか♡」
──♡──
真希さんの手帳には、ほそく弧を描く筆致で、こう記されていた。
“No.030:ハルキ(仮)──声のトーン、もう女だった♡”
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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「その目……逸らしただけで、もう女の子の武器よ♡」




