第十五話:タクミ、背中をゆるめる午後♡
第十五話:タクミ、背中をゆるめる午後♡
──♡──
その女──真希さんは、隣に住んでいる。
夕暮れどき、カーテンの隙間から差し込む光のなか──ふと鏡を見た。
シャツの背中。肩甲骨のあたりが、やけに“丸み”を帯びていた。
なぜかブラのホックが浮いて見える。けれど、そんなもの、自分が着けているはずがなかった。
──♡──
「……え、なにこれ……俺……いつの間に……?」
タクミ(仮名・27)。設計事務所勤務、猫背気味。
長時間のデスクワークで、姿勢の悪さをよく指摘される。
けれどこの日、鏡に映った自分の“背中”が──なんだか女の子っぽく、やわらかく見えた。
(いやいや、こんなカーブの背中、俺じゃない。……よな?)
──♡──
【洗面台・姿見】
・鏡の脇に「美しい背中のつくりかた」雑誌の切り抜き
・肩甲骨矯正用のストレッチバンド
・「今日も姿勢キープ♡」と書かれたラベンダー色のメモ
「いや、“♡”いらないだろ。“姿勢キープ”だけで十分だから……!」
──♡──
【ベッド・クローゼット】
・ハンガーにかけられたストラップレスブラ
・下着の横に、背中が大きく開いたオフショルダーのトップス
・クローゼットの奥には“着用済み”らしきタンクトップの束
「ちょ、なんでこんなに背中開いてんの?……俺、絶対、選んでないからな……?」
──♡──
【下着】
・ヌードベージュのストラップレスブラ。ホックは二段、背中側が広くカーブしている
・タグには「SmoothBack/服が惚れる背中へ」
・指先で撫でた瞬間、背筋がスッと伸びるような感覚がした
「……まさか、下着で背中って……育つ……のか……?」
──♡──
そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、黒の肩開きカットソーに、ベージュのロングスカート。
ゆったりした所作で近づき、タクミの背中にそっと視線を落とした。
「ねえ……もう、その背中、“男の直線”じゃないわよ?」
「っ……ちょ、やめて……見ないでください……これはその、伸びただけで……」
「でも今日、ちゃんと“ホックの位置”、自分で確認してたわよね?」
「う、うそ……なんで、それ見て……いや、違っ……!!」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
──♡──
【黒服さん突入】
バァァァン!!
窓がふわりと開き、黒服3名が風のように飛び込んでくる!
黒服1「背中ライン、湾曲度+5°!女型定着進行中!」
黒服2「ホック位置調整3回確認!姿勢リセット済み!」
黒服3「鏡チェック頻度:1時間に2回!これはもう、完全に“魅せ背中”!」
タクミ「や、やめろってばっ!! 俺、ただ姿勢を意識してただけなんだよぉぉ!!」
──♡──
【個体データ】
識別コード:No.015(タクミ)
背筋伸展率:前週比+12.4%(ホック補正影響)
ストラップレス装着頻度:連続5日
鏡確認記録:14回/日(主に背中)
備考:「なんか今日、服が背中に沿ってくれてる……」と発言あり
──♡──
【数日後】
タクミは、背中のラインが出るシャツを選ぶようになっていた。
服のタグ位置が気になり、自然と姿勢を正す癖もついた。
トイレの鏡で“後ろ姿”をチェックする回数が増え──
いつの間にか、“背中が似合う下着”を基準に服を選んでいた。
もう、「猫背」だった頃の自分を思い出せなかった。
──♡──
真希さんは、タクミの背中をそっと撫でながら微笑んだ。
「ね……可愛い背中って、抱きしめたくなるでしょ♡」
「ふふ……“次”は、ストラップレスのドレス、用意しておくわね♡」
──♡──
真希さんの手帳には、サラリとした筆致でこう記されていた。
“No.016:レン(仮)──あの手首、細すぎじゃない?”
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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「うふふ……もう、“後ろ姿”で女ってバレちゃうんじゃない?♡」




