第十四話:ユウト、甘く光る指先で♡
第十四話:ユウト、甘く光る指先で♡
──♡──
その女──真希さんは、隣に住んでいる。
夜の洗面台。手を洗おうとして蛇口をひねった瞬間──爪先が、淡くきらめいた。
うす桃色の艶。丸みを帯びた形。うっすらラメが乗っていて、なぜか──指先が、とても“綺麗”だった。
けれど、自分はネイルなんてしていない……はずだった。
──♡──
「な、なにこれ……? いや、これ、いつ塗った……?」
ユウト(仮名・24)。私服も地味な事務職男子。
飲み会も苦手、恋愛経験もほとんどゼロ。
けれど今、自分の爪が“女の子みたいに”仕上がっていて──
しかも、ちゃんとキューティクルケアまでされていた。
(いや、いやいや、これは……保湿とか……そういうやつで……!)
──♡──
【洗面台・鏡まわり】
・ハンドクリームの隣に置かれた透明のネイルオイル
・「爪の形だけで印象が変わる♡」と書かれた雑誌の切り抜き
・鏡の端にメモ「今日の爪は“ほんのり甘く”♡」
「な、なんだよ“ほんのり甘く”って……指先に味覚ついてんのかよ……!」
──♡──
【リビング・デスク】
・爪ヤスリと甘皮プッシャーが几帳面に並んだ机
・開きっぱなしの通販ページ“初心者でも簡単!セルフネイルセット”
・すでに購入済みの箱が、開封されて空っぽになっていた
「俺じゃない……俺が買ったわけじゃないって……けど、爪、きれいすぎる……」
──♡──
【下着】
・白とラベンダーの淡色ショーツ、爪の色に合わせたデザイン
・タグには「Petit Touch/指先から始まるフェム意識」
・指先でそっと引っかけた瞬間──するっと吸い込まれるように馴染んだ
「……なんか、俺の指、こういうの“扱い慣れてる”気がする……」
──♡──
そこに現れる、隣の女──真希さん。
この日の真希さんは、ライトグレーのVネックニットに、ワインレッドのプリーツスカート。
小さなネイルブラシを手に、ユウトの指先をそっと持ち上げた。
「ねえ……その指先、自分で整えたんじゃないわよね?」
「や、やめてくださいっ! これは……保湿ケアのついでに、たまたま……!」
「でもさっき、爪の形、綺麗って“見とれてた”でしょ?」
「っ、それは……っ! 鏡に映っただけでっ……!!」
「さあ、“男の終わり”の時間よ♡」
「──どうぞ♡」
──♡──
【黒服さん突入】
バァァァン!!
キッチンの小窓が開き、黒服3名が足音ひとつなく忍び込む。
黒服1「ネイル確認!甘皮処理済み!ポリッシュ層二重!」
黒服2「保湿ケアライン、指の第一関節まで均一です!」
黒服3「これは“自分で塗った感”ゼロ!誰かにやってもらってる指ですッ!」
ユウト「ちょ、やだっ、まじでっ、これは自然治癒の延長なんだってばぁああ!!」
──♡──
【個体データ】
識別コード:No.014(ユウト)
ネイルケア使用履歴:連続9日(複数種類)
塗布ミス率:0%(非自力疑惑)
爪長:女子平均+1.2mm(ラウンド型形成)
備考:「男でも爪がきれいだと得っていうし……」とつぶやいた音声あり
──♡──
【数日後】
ユウトは、ペンを持つときも、手元に“見られてもいい”意識が芽生えていた。
カフェのレジで小銭を差し出す指が、自然と丸く揃う。
ふとした瞬間、鏡で自分の爪を確認するクセがついていた。
「塗り直したいな」と思った自分に、ぞっとしながらも──
指先に光るツヤが、なぜか“自分”を守っている気がした。
──♡──
真希さんは、ユウトの爪にそっと息を吹きかけ、微笑んだ。
「うふふ……その指先、もう“女のためにある”って顔してる♡」
「次はね……“ネイルの似合うブラ”、つけてみましょうか♡」
──♡──
真希さんの手帳には、丁寧な書き文字でこう記されていた。
“No.015:タクミ(仮)──姿勢、もう“女の背中”よね。”
完──“今日もまた女にしておしまい♡”
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「うふふ……もう、“指先”から女の子になっちゃったのね♡」




