序章
主人公の半妖が
日本を裏で守る『神隊』の一員となり人間や妖時には
諸外国と戦うバトルファンタジー小説です。
「日本」
それは、極東に位置する島国である。
多くの人がそこを神の島と太古の昔から信じていて、戦の時にでも神頼みをするような島である。
だが、令和になると神を信じなくなり今では無宗教の国である。
だが、神は存在していた。
初代天皇「神武天皇」
の子孫を総軍隊長として日本を裏から守る
『神隊』
が
『天照大御神』
の代わりとなり日本を影から支えているのである…
「あちー。」
黒髪に黒目のごく普通の日本人の
紅露 律の僕は、
今東京の真夏の太陽の夕日で焼かれている。
普通に暑いと思う。信号が青に変わり、横断歩道を
前に一歩ずつ渡っていく。
それにしても暑い。
コンビニで涼もうと思い、コンビニがある角を曲がった。
「「ゴールイーン!」」
コンビニに思いっきり飛び込んで行く。
なぜかとなりの男も同じセリフを言っているが…
チラリと横を見ると、脱色した髪にピアスを開けた誰が見るからにしてもチャラチャラしている男がいた。
「なんだ。お前かよ。」
僕の心の親友。芳田 百羽。
数々の女をナンパし、僕の学校でハーレムを作り出した正真正銘の「真の陽キャ」だ。
「なーんだ。律も入るのかよ。」
「なんか文句ある?」
「べーつに?」
ニヤニヤしながらこっちを見てくる百羽。
「なに買う?」
ぶっきらぼうに聞いてみる。
「涼みに来ただけー」
呑気に答えてくる百羽。
「それにしてもほんと、お前の名前キラキラネームだよな。」
歩きながら棚の中身を物色していく。
「ふん。百羽の鶴のように団結して望めるようになれて言う意味で「ユウ」だぞ!何回も言わせんな!」
肩を組見ながら頭をぐりぐりしてくる百羽。
「痛い。痛い。やめろ。ここコンビニだぞ!」
僕が笑いながら注意すると
「うるさーい!」
笑いながら百羽が肩を組んでくる。
「律ー何食う?」
「かりんとう饅頭とチョコミントフラッペ。」
「相変わらず甘党だな…」
イケメンな甘党…と、ぼそっと百羽が言う。
「なんか文句あるかい?百羽くーん?」
にこやかに笑いながら覗き込む。
「なーんも。」
目線を逸らされる。
(お前のほうがイケメンだっつーの)
心でぼやいて肩を解いて離れる。
ため息をついてかりんとう饅頭とチョコミントフラッペを冷蔵庫と菓子ケースから取り出す。
「お前は?」
「言ったろ。いらないって」
「了」
レジに向かう。
ついでにバカも一緒だ。
「お会計は473円です。」
お姉さんが、スキャンして値段を言ってくれる。
「あ、コレで「お姉さん、美人ですねー。連絡先くださーい。」
途中で百羽が口を挟んできた。《ナンパした》
「おい。」
軽く頭を小突く。
「いやー、メンゴメンゴ。」
「すみません。こいつが。」
頭を掴んで無理やり頭を下げさせる。
「あ、いえ。大丈夫です。あとお釣り30円とレシートです。」
「あ、ども。」
お釣りを受け取り、レシートを捨てる。
「ほら、いくぞ。」
百羽の手を引いて外に行く。いつのまにか外は暗くなっていた。
「痛…」
「お前のせいだよ。」
チョコミントフラッペを飲みながらかりんとう饅頭を齧り付く。
横の路地裏に入って、百羽の手を離そうと声をかけた。
「百「なー、律。」
口を挟んできた。少しイラついてくる。
「うん?」
寛大な僕は聞き返す。
返事がない。
「百羽?」
もう一度声をかける。
返事が返ってこない。
意を決して振り向くと、百羽は俺が手を掴んだ状態で腕を切り離されていて、上半身が消えていた。
「は?」
乾いた声が喉から漏れてくる。
背中に冷や汗が伝い、思考が止まる。
スローモーションのように百羽の体が傾き、
地面に落ちる。
グチャ切り離された下半身が地面に落ちると血が地面を赤く彩る。
「…百羽?」
遠く離れたところから声がしたように聞こえる。
意識が遠くなりそうで、気合いで耐える。
一歩ずつ百羽に近づく。足が重く感じる。
「 」
聞き覚えのない言葉、いや、言葉なのか?何かの音が聞こえて振り向くと大きな顔があった。
「え?」
大きな顔に体。頭からは角が生えていて四つの手に二つの足があり、口から赤い血が流れている。
物語の鬼のようだ、と気づくには角がなかったら気づかなかった。
何か言葉を喋っている。聞こえるけど耳が言葉として聞き入れようとしても、脳が音と判断する。
角を掴んで手前に引っ張る。
バキッと音がして折れる。
『ギャ』
悲鳴が聞こえた。角を使って腹を抉る。
紫色の血が腹から吹き出し、パーカーを紫に染める。
「お前?百羽を殺したの?」
何も考えずに聞いてみた。
怪物はずっと痛みで悶えている。
「おい、答えろ。」
髪を掴んで、顎に角を刺す。
悲鳴を上げる。
脳がこいつが百羽を殺したと判断した。
「あいつ、僕の友達なんだけど。どうしてくれるの?」
目を怪物の目と合わせて聞く。
目が恐怖に染まっている。
「もう一度聞く。百羽を殺したのはお前だな?」
怒りで目の前が赤く感じる。
足を怪物が振り上げた。
腹を掠めた足を素手で叩く。
簡単に足が折れた。
『 』
また、何か言っている。
「聞こえねーよ。」
怪物の胴体を蹴り上げる。
下半身が飛び散る。
血でもうパーカーが紫に染まっている。
「きったな。」
鬼の目をみるともう、光が入っていない。
鬼の首を角で切り落として、地面に捨てる。
「百羽…」
百羽の遺体に近づく。
涙が出てきて目の前がぼやける。体中から痛みが感じる。目が痛くなった。腹も痛い。いつのまにか怪物の足が腹を切っていたらしい。
「ごめん。守れなくて…」
百羽の体に手を当てて語りかける。
「ごめん…ごめん。」
あの生意気な言葉も整った顔ももう見ることができない。
「おい、この妖はお前がやったのか?」
上から声がした。反射的に上を向くと
黒髪が月に照らされ、昔ながらの和服に詰め襟をきた若い男が立っていた。蝙蝠マントを羽織っていて、背中には何かの印が描かれている。
「おい、聞いてる?」
「あ、はい。そうですよ。僕が殺しました。」
男が降りてきて、僕を見る。
「お前、半妖か。」
聞きなれない言葉が聞こえた。
「半妖ってなんですか?」
「は?知らねーの?え?お前、どうやってコイツを殺した。」
男がその無愛想な目を近づけて聞いてくる。
「角を折って、殺しました。」
淡々と答える。
「へー。お前、蒼月の花の家のもん?」
「なんですか?それ?僕はそんなもん知りませんよ。」
おかしな人だ。
「お前…その遺体。友人か?」
「はい。親友でしたよ。」
百羽の体を見て言う。
「お前、神隊に入らないか?」
「なんですか?さっきから鬱陶しい。今回こそ僕の質問に答えて下さい。神隊ってなんですか?」
「神隊は、そこにいる化け物を倒す国の管理下にある組織のことだ。」
さっきの怪物を見ながら男が言う。
「お前は妖と人間の子供で、さらに何か強力な妖の力を取り込んでいる特殊な人間だ。蒼月の家は妖と人間の子供が生まれることが三百年に一度ある家だが、お前は一般家庭の子だろう?まず、前例がない。そんな特別な存在をの話するほど俺は馬鹿じゃない。どうだ?こないか?」
正直言ってどうでもいい。けど、百羽を殺した妖怪と人間の子供の僕が妖を殺すことができたら、妖を少しでも大量に殺せたらあいつらをここで百羽だけを殺したことを後悔させられるか。
「なぁ、妖を殺したら百羽を殺したことを後悔されられるか?」
「さあ?お前次第だ。」
目を細めて僕を見下ろしながら男は言う。
「だが、俺の手を取れば確実に妖達を後悔させられ る。さぁ、どうする。」
手を差し伸べてきて、僕を笑ってみる男。
「乗ってやる。僕を使ってみろよ。後悔するな。」
手を掴んで立ち上がる。
男は口角を上げて、僕を見る。
「俺は、神隊第二番隊『龍牙』隊長の
九条 瀬だ。お前は?」
「紅露 律。」
目と目をみて、互いに名乗る。
「やってみろ。九条瀬。」
「何様だよ。紅露律。」
互いに笑い合った。
百羽。僕は妖を必ず殺し尽くす。
お前を殺したんだ。地獄を味わらせてやる。
待っていろ。殺し尽くしてやる。
記念すべき序章でした。
いかがでしたか?書いている間とっても想像力が働いて楽しかったです。