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第7話 ヒラエツキ

正気か狂気か、モロコシを助けるために奔走する少女柊彼処。彼女の言葉に従い鐘なき岬に鐘を求めて車を走らせる綾葉。縋ったのは藁かあるいは…。

そうして伊多区の鍾音岬に着いた。ここは本来ないはずの鐘の音が聞こえたと言う伝承がある場所であって実際にはそんなものは存在しない。しかし彼処さんは『鐘のある場所』としてここへ来る様に言ったのだ。その真意はやはりわからない。


噂によればここで鐘の音を聞いたと言う人は少なからずいる。彼女の耳にもここの鐘の音が聞こえると言うのだろうか。


俺は鍾音岬の駐車場に車を止めた。彼処さんは車から降りると岩柱が見える場所へ向かう。俺もその後に続いた。手すりの近くまで行くと彼女は手を前に差し出し、人差し指と中指の2本で虚空を切る仕草をする。


するとどういう訳か彼女の眼前に裂け目の様な物が出来た。彼女はその裂け目に指を突っ込み両手で中をこじ開ける。


「!??」


先程の道の駅もそうだが信じられない光景を立て続けに見て酷くショックを受ける。彼女はこちらに戻って来るとコムロのお面とヒラツラミのお面を手渡して来た。


「ここから先はコムロのお面を付けてください。それと中では私の許可なくしゃべらないでください。もしあなたが勝手な事をして危険に陥った場合は命の保障はしません」


「…彼処さん、あなた何者なんですか…?」


「ここまで来てあなにた隠しておく必要はありませんね。私は化け狐のコンコです」


そう言うと彼女の頭には獣の耳が生え、尻には尻尾が3つ生えた。つばを飲み込む。どうやら今までずっとそばにいた少女は人間ではなかったらしい。信じられないが今の今まで騙されていたのだ。まさか、まさかこんな身近に…。


「狐岩の……」


彼女はうなずいた。あれ、でもおかしくないか?化け狐は伝承によれば化け狸と村人が共謀して封印しているはずなのだ。完全に人間に成りすましているほどだ、妖怪が集まりやすいと言う話はあれどそれだけ力を持った化け狐がそう沢山いるとは思えない。彼女が伝承の化け狐である事は事実なはず。


「色々と聞きたい事はあるでしょうが今は時間がありません。先を急ぎますよ」


そう言うと耳と尻尾を隠してコムロのお面を被る彼処さん…もといコンコさん。こうなったら腹を括るしかない。重要なのは彼女は味方でありモロコシさんを助けようとしている事と、今のままだと海河童と言う妖怪によってモロコシさんが帰らぬ人となろうとしていると言う事だ。この際はコンコさんが人か妖怪かは些細な問題だ。


俺もコムロのお面を付け、彼女が入って行った空間の裂け目に入って行った。周りの地形に大きな変化はないがまず空気が違う。暑くもないが涼しくもない。まるで大きな生き物の口内に入ってしまった様に空気が生暖かく湿っている。土も植物も彩度が低く、どこか冷たい印象を受ける。


ゴーン…ゴーン…。


鐘の音…。うっかり言葉を発しようとしてしまった。コンコさんはキョロキョロと周りを見渡して振り返る。


「喋っても大丈夫です。体調に変化はありませんか?本来は死して来る様な世界なのであまり生者にとっては心地の良い場所ではありません」


「あまり居心地は良くありませんが体調には問題ありません」


「それは良かった」


コンコさんはそう言って岩柱…ではなく鐘楼の方角を見ている。空間の裂け目に入る前は岩柱だった場所には、まるで雑に張り付けたコラ画像の様に出鱈目に大きな鐘楼があった。鍾音岬の鐘の音はあそこから鳴っていたのか…。


鐘は誰に叩かれたわけでもなく勝手に揺れ動いては音が鳴っている。見た目の割に音は小さい。呆気に取られていると隣でコンコさんがへなへなと力なくその場に座り込んだ。


「かし…コンコさん?」


「はぁ…良かった。不幸中の幸いです、船は出ていません。モロコシさんの魂はまだ中津町にありますよ」


ひとまずモロコシさんが無事なのはわかったが船は出ていないと言うはどういう事だろう。ふと気が付くと巨大な鐘楼に目が行って気付かなかったが遠方に島が見える。あれは…。そうだ、そう言えば海河童の説明を聞いた時に言っていた。


「あれが黒崎島なんですか?」


「ええ、そうです。彼らはずっとモロコシさんの魂を狙っていました。彼の魂を手に入れたらその他の魂には目もくれずに黒崎島に出航するんじゃないかと睨んでいたんですよ。彼らが欲張りだったおかげで救助できる確率は大幅に上がりました」


そう言うとコンコさんは立ち上がって移動を始める。俺も後を追った。


「いずれここに連れて来られると言う事は待ち伏せをするって事ですか?」


「いえ、まずは舩を探して積み荷を確認します。状況によってここで待つべきか彼の居所を探りに出かけるべきか変わるので」


「船に乗るって事ですか!?見つからないといいですけど…」


「そのためのコムロのお面です。このお面が欺けるのは鬼だけではありません。とは言え相手は海河童。私の妖気に感づけば危険です。積み荷の確認は綾葉さんにお願いします」


「分かりました」


「これから多くのコムロと会う事になります。海河童もいちいちコムロを見てはいないでしょうがあなたも一応は彼らの動きをよく見ておく事です。あまり不自然な動きをすれば万が一と言う事もありますからね」


鍾音岬を下る道に向かう。元来た世界にはない階段だ。コンコさんの言う通り辺りにはコムロと呼ばれる妖怪が確かに増え始めた。泥をお面の様に厚く顔に塗った幽体がそこら中を歩いている。形状はそれぞれで二足歩行はしているが人間の形を保っている物から青白いソーセージみたいになっている者もあった。膝程の高さもないコムロもいれば見上げるほど大きなコムロもいる。これの全てが妖怪になり果てた子供の霊だと言うのか…。


「綾葉さん、辛いでしょうが決して同情はしないでください。同情心を彼らに向ければ彼らはあなたに助けを求めてまとわりつきます。囲まれればそのまま死に、死んだ魂にさえ纏い続け、やがてあなたもコムロになります。数が数なので私でも助けるのは容易ではありません」


コンコさんはそう言って指で辺りを示す。するとどういう訳か辺りには大勢のコムロが出現した。いや…違う。出現したんじゃない、初めからいたんだ。意識すればするほど可視化される存在なのだ。気が付けば数人のコムロがこちらを向いている。背筋が凍った。


鈍い動きでこちらに歩み寄るコムロを心を鬼にして避ける。深追いはして来なかった。俺は同情心をを抱かない様に気を付けつつコムロを意識して観察した。彼らの動きをよく学ばなければモロコシさんを助ける所ではなくなる。





フラフラ、フラフラ…。俺は目的なく彷徨うように頭を揺らしながら船を回る。コンコさんが貸してくれた葉っぱのおかげで舟の中の壁は通り抜けできる。当たり前の様に壁を通り抜ける事ができると床まで通り抜けて海に落ちないか不安になる。実際にはそんな事はないのだが。


海河童の船はまるで映画で見た海賊船か何かの様だった。パッと見は木造に見えるが実際の所はどんな物質で作られているのか分からない。出会う海河童はいずれも俺より一回りも二回りも大きく、鈍く黒光りする肌に筋骨隆々強い体つきをしていて、嘴には鋭い牙がついていて目つきが非常に悪い。


「ハァ、さっさと黒崎島に帰りてえ。見張り番ってのは暇でならねえや」


「ちょっとぐらいつまみ食いすっか?」


「ニノトにバレたらただじゃすまねえぞ。今回はモロコシってガキを連れてくりゃすぐに帰れるんだろ?少しの我慢じゃねえか」


「んーいや、船に積む量は今年も変わらんらしい。神慰祭いっぱいは帰れねえ」


「しばらく酒はお預けか…やんなるぜ」


船に残っている海河童がそんな会話をしていた。事情は分からないが死者の連れ攫いは神慰祭前後に行われ黒崎島に連れて行かれるらしい。彼らの見張っている部屋の中を覗くと子供から大人までの幽霊が中に入っていた。彼らの会話からも分かっていたがやはりモロコシさんはまだここにはいない様だ。


とにかく積み荷スペースに入れられた幽霊はまだそこまで多くない様だ。モロコシさんを助ける余裕はまだまだある。一応他の場所も確認してみたが他に幽霊を閉じ込めているスペースはないようだ。用事が済んだので俺はできるだけ非効率的な動きで元来た道を戻って行く。


『可哀そうに。本来なら行くべき所にも行けず黒崎島送りだなんて…』


中に入ってるのはコムロではなく大人や子供の幽霊だ。少しぐらい不憫に思ってもついて来たり囲まれたりする恐れはないだろう。そもそも出ない様に海河童が見張っているし。


考えごとをしているとある海河童と目が合った。周りの海河童に比べて肌が僅かに赤みがかっている。心臓の鼓動が僅かに早くなった。バレ…てはいないはず。俺は少しずつ離れているが奴はこちらを見たままだ。


「どうしたニノト、何見てんだ」


「いや、何でもない」


やけに渋い声色で返事をする先程の海河童の名前はニノトと言うらしい。やがて興味を無くした様に余所を向いた。俺はホッとしながら船を降りた。コンコさんとの約束の場所まで向かったがどういう訳かそこには彼女はいなかった。場所を間違えたんだろうか。


『コムロの真似ですよ、綾葉さん』


どこからか小声が聞こえた。声の主はコンコさんだ。意味は分からないが言われた通りにコムロの真似をして辺りを彷徨ってみる。


「ふん…気のせいか」


岩陰から声が聞こえた。その声はニノト…!俺は音のする方を意識しない様に気を付けつつ演技を続ける。やがて近くの岩肌からペロリとシートの様な物が剥がれると隠れていたコンコさんが現れた。シートは葉っぱになる。


「ふう、勘の鋭い海河童ですね。厄介な」


「すみません、まさか後を付けられてるなんて…」


「いえ、むしろ居残り組だから大した海河童はいないと高を括っていた私の方にも問題があります。危険な仕事を任せてすみません。無事で何よりです」


それから俺は船内の様子を伝えた。彼女はふんふん、と頷いていた。


「ならばモロコシさんはまだ事故の現場からそう遠くないはず。それじゃあ綾葉さん、一度元ん世界に戻りましょう」


「了解です」


そうして俺達はこっちの世界を後にした。


元の世界に戻ると俺は思わずギョッとした。出口の外に20匹ぐらいのネズミがこちらを向いて待機していたのだ。コンコさんはネズミの近くで屈んだ。するとネズミ達は口々に鳴き始めた。彼女は袖から穀類を取り出して彼らに分け与える。


「綾葉さん、豊玉区の翼馬神社にお願いします」


「え?ああ、分かりました」


言われるままに彼女を乗せて豊玉区へ戻る。


「あちこち移動してもらってすみません。どうしてもまずは船を確認しなければならなかったものですから」


「いえ…。モロコシさんが事故に遭ったのを知ってたのがずっと疑問でしたが、動物と会話できるんですね」


「油断しましたよ。そろそろ神慰祭だからって船を確認しに出かけたら既に到着していただなんて。今までこんなに早く来る事なかったのに…」


コンコさんは親指の爪をかじりながらそう言った。彼女が神慰祭の前日離れていたのは海河童の船の確認に出かけるためだったらしい。…動物に頼んでモロコシさんを見張らせていた事、海河童の動きを注視ていた事。まるでコンコさんは最初からずっとモロコシさんを守るために傍にいたかのようだ。


信号で止まっているとコンコさんは遠くの女性を注視する。そして自身の頭を撫でる様に触れると彼女の服装が先ほどの女性と同じ物になる。


「どうして妖怪のコンコさんがモロコシさんにこだわるんですか?」


「…狐岩の昔話には続きがあるんですよ。私、あのお話の半年後に化け狸に助けられましてね。その時にある頼みごとをされたんです」


「化け狸の頼み事?」


俺は話を聞いていて首を傾げた。それもそうだ。化け狸に助けられたとは言え元はと言えば封印される事になったのは化け狸とその足の速い男のせいなのだ。仕返しこそすれど馬鹿真面目に頼みを聞いてやる義理などあるだろうか?あるいは反省した?首を傾げる俺を見てふふっと笑うコンコさん。


「まあ私も最初は乗り気じゃありませんでしたよ」


豊玉区に向かうまでに彼女はあの昔話の続きを話してくれた。


狐岩に封印されて半年後、悠久の時を過ごす事になると覚悟していた化け狐の封印は突如として解けた。何事かと思えば化け狸が封印を解いたのだ。顔を見てすぐは仕返しをしてやろうと考えた物の力が弱っていたためまずは逃げようとした。何を思ったか化け狸は追って来ない。


足の速い動物に化けて追いかけて来れば捕まえる事だってできたはず。どうしてそうしなったのだろう。気になってコンコさんは化け狸の元へ戻った。


『何のつもりだ狸』


『頼み事があって来た』


『…断る』


『まあまずは聞け。酒もある』


痛めつけるつもりなら最初からそうしているはずだ。罠ではないだろう。知恵比べならそう何度も負ける自分ではない。そう思って彼女は狸の元へ戻った。狸は盃にお酒を注ぐと彼女に渡す。ちょっと傾けてみたが目から火が出るほどキツい酒だった。なのに、不思議と美味い。


化け狸の頼み事とはコンコさんを封印するのを手伝った足の速い人間を見守り、必要とあれば助けて欲しいと言うものだった。


『断る』


『そう言うな。3日でいい、あいつを観察してみろ。面白いぞ』


『悪戯は?』


『3日は我慢しろ。それ以降気にらなきゃ好きにしていい』


『後悔しないといいな』


そこまで話すとお互いに黙って酒を飲み交わした。久しぶりに眺めた夜空は箱から落して散らばった宝石の様だったそうだ。同じように夜空を見上げた狸が言う。


『俺は都へ行く。人間として生き、人間として死ぬ』


『お前さん、頭をどこかにぶつけたんじゃないか?』


『違いねえや。…頼む、コンコ』


『ちぇっ、仕方ねえな。3日だけだぞ』


コンコがお酒に酔って引っくり返っている頃、化け狸は酒も抜けないうちから山を去って行った。彼女は言われた通りに足の速い男の所に向かうとその人を観察した。男は無欲で働き者で、何かと貧乏くじを引いていた。当人は気にしている様子ではないがずる賢く生きて来たコンコさんにとっては飽きれてため息が出るほど間抜けに見えた。


周りの人間にどれだけいいように扱われている事か…。面白いどころかつまらない人間だ。彼女は早くも2日で観察に飽きた。4日目に殺してやろうかなどと考えながら真面目に3日を過ごした。


いよいよ4日目、コンコさんは美女に化けて男の前に現れた。鼻緒が切れたと言って歩み寄り、助けてくれた所を色仕掛けしたらしい。彼の分厚い上っ面の下にどんな下心を持っている事やらと期待したのだ。


丁寧に場の雰囲気まで作ったのに意に介する事無く放されたコンコさんはまるで狐につままれた様な気分で外に突っ立っていた。きっと美少年の方が好みなのだろうと後日別の方法でトライしたがこれも駄目だった。


『おかしいなあ…』


コンコさんは半ば意地で下心を引っ張り出してやろうとあの手この手で策を練ったが男は金に興味もなければ権力にも興味がない。毎日毎日誰かにいいように扱われてヘラヘラしながら過ごしている。彼への悪意は少しずつ愛着に代わり、むしろ彼に害をなす相手を遠ざける様に働く様になっていた。


自分らしくないと頭の中でぼやきながら過ごしているある日、彼女は元の姿で山を走っていると人間の仕掛け罠にかかって足を怪我してしまった。何の偶然かそれを見ていた男は駆け寄って応急処置をする。ただの狐ではない、尾が3本。あの日封印した化け狐なのを分かっててそうしたのだ。


『はん、頼みの化け狸がいないからせめて私に媚びを売ろうというんだな。賢明な判断だ人間』


『いつもありがとう』


コンコさんは驚いた。人間は自分が化けて接触している事に気付いていたのだ。分かってて今まで気づかないふりをしていた事が分かると恥ずかしくて悶えそうになった…が、足を怪我していて逃げるに逃げられない。


その後、コンコさんは彼の家でしばらくお世話になった。化け狐とあって体の治りは早かったためそう長く傍にいる事はなかったが、彼の心に直に触れた彼女は愛着がより一層深くなった。その一件以降は手口を巧妙化させ自分が助けてる事に気付かない様に努力した。


やがて彼には想い人が出来て、結婚して愛を育み子供ができた。親に似て底抜けに優しい子供だったのでコンコは自分の子供の様に思って守っていた。そして時代を経て守る対象は子々孫々と引き継がれやがて種々モロコシと言う人物に辿り着く。そんな流れだ。


「未来から来た孫どころか先祖代々の守護神じゃないですかコンコさん」


「そんな大それた存在じゃありませんよ。モロコシさんを海河童が狙ってる事を知りながら護る事ができませんでしたし」


「積み荷が一杯になる前に出港する可能性があったのは船内の海河童の会話からも確認済みですが…そもそもどうしてモロコシさんは海河童に狙われてるんですか?」


「霊力が高く良質な魂を持つからですよ。酒にして良し、酒の肴にするも良し。海河童にとっては極上のご馳走なんです。そうして飲み食いされた魂はもう転生する事はありません」


「ヒラツラミがいてくれたなら、こんな事許さなかっただろうに…」


ハンドルを握る手に力が入った。彼女はでこの辺りを指で抑えてため息をつく。


「普段はいますよ。でも神慰祭の前後は神のご意向を伺いに上京してるから中津町にはいないのです。…あ、車はシカクマメに止めてください。しばらくそのままにするので駐禁取られるとまずいです」


「分かりました」


車を止めて外に出るとコンコさんは俺の頭に葉っぱを乗せた。そして俺の手首を握るとふわっと宙に浮いて翼馬神社を目指す。何度か着地しながら向かう事になるから舌を噛まない様にと注意を受けた。家の庭や電柱の上に何度か降りながらも翼馬神社を目指す。


彼女のおかげで多くの事が分かったが疑問も増えた。彼女の話を聞くに海河童は少なくとも数年前には既に魂を連れさらっていたはずだ。歌叫岩の兄妹は任された土地の管理・統治をなおざりにして密会を重ねていたため罰として別々の場所に封印され仲を引き裂かれた。もしヒラツラミがこの土地を任せられているのなら死者の数に対して魂の数が合わなければその責を問われるはず。


昔話で良い人が今でも良い人とは限らない。コンコさんだって昔は化け狸よりも悪質な悪戯をして村人を困らせていた悪人だったが今は大人しいし人間のためにリスクを負って行動をしている。百聞は一見に如かないのだ。


やがて到着した翼馬神社で俺は異世界へのゲートを開こうとしている所を止めて先に話を挟む。


「コンコさん、1つ確認したいんですが…。ヒラツラミのお面って海河童に対して使うのに必要だったんですよね」


「ええ。いざとなったらそれを使って難を逃れるつもりですよ。誤魔化せるのはほんのひと時でしょうが」


「…少し疑問なんですが本当に効果あるんでしょうか。もしも、ヒラツラミや神様が海河童の所業を知ってて見て見ぬふりをしているとしたら…使っても効果ないのでは」


さっきまでの考えごとをコンコさんに説明した。彼女は顎に手をやって考える。


「多分ヒラツラミは大丈夫だと思いますよ。どうやらヒラツラミはヒラエツキに呼ばれて上京しているらしいのです。当人は下知は特使を寄越して知らせてくれと頼んだものの駄目だったみたいで。共謀としているとしたら恐らくヒラエツキです」


「ヒラエツキって何者なんですか?」


「今はモロコシさんを助けるのが先です。重要なのはヒラツラミのお面はいざという時に使えると言う事です。行きましょう」


彼女はそう言って異世界へのゲートを開いた。俺達はコムロのお面を付けて中に入る。ヒラエツキ…。ヒラツラミとは一体どんな関係なんだろう。気にはなったが今は忘れて目の前の事に集中しよう。


前回どんな話だったっけ?ってならない様に前書き書いてるけどこれいる…?

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