第1話 舞い込んだ凧
種々モロコシ(くさぐさ もろこし)は素泊まりのみの民宿シカクマメを経営する主人である。1週間ほど前に予約を入れていた知加良綾葉を待っていたが中々やって来ない。スマホを落としてしまってその辺を彷徨ってるのではないかと思い、店番を柊さんに任せて豊玉駅へ向かう。
「来ないなぁ…」
待てども待てども彼…知加良綾葉さんは来ない。電話をかけてみたもののコール音は鳴っても出ない。一体どうしたというのだろう。
私、種々モロコシ(くさぐさ もろこし)は中津町豊玉区にある小さな民宿『シカクマメ』を経営する主人だ。過保護な両親から離れるのに適当な理由をつけて祖父から民宿を家事譲ってもらったのだ。格安な代わりに素泊まりしかできない。
今日は1週間ほど前から予約していたお客様が来る日。なのにいつまで経っても現れない。お客様が来るかもしれないのだから家から動けないしどうしたものか…。私はどうすべきか考えているとついに戸が開いた。
「いらっしゃいま…、柊さんか」
「私ですモロコシさん」
この子は柊彼処。夏休みで暇をしている僕が以前通っていた豊玉高校に在学している女の子だ。あまり多くの事は語りたがらないので詳しいよく分からないがやけにこの宿を気に入っている様でまるで友達の家の様に遊びに来る。夏休みの間はここでアルバイトしてくれるらしい。別に忙しい訳ではないが従業員が私1人なので人手は欲しいと思っていた。
私は知加良綾葉というお客さんが来ない事について話した。
「今日はアルバイトの日じゃないので頼める立場ではありませんが、少しの間店番を頼んでもいいですか?」
「構いませんよ」
「ありがとうございます。冷蔵庫の物は好きに飲み食いして構いません。それじゃ行って来ます」
「お気を付けて」
急いで外に出る私を手を振って見送る柊さん。不慣れな土地に行ってしまったものでスマホを落とした上にこの辺を彷徨っているのかもしれない。そんな風に思って駅までの道を歩く事にした。駅に向かうと途中で倒れている男性を見かけた。私は急いで駆け寄り声をかける。どうやら意識はあるようだ。
「大丈夫ですか!?」
「ええ…、まあ…。すみません、お水をいただけませんか…」
私はまず彼を起こして近くのベンチに座らせた。それから自動販売機で水を買って彼に飲ませる。少しずつ飲ませ休ませていると少しずつ顔色が良くなって来た。
「死ぬかと思いました」
「豊玉駅は人が少ないですからねえ。もう体調の方は大丈夫ですか?この辺りは見ない顔ですが、病院までの道は分かります?」
「いえ、もう体調の方は大丈夫です。それより予約してる店に急がないと…」
「案内しますよ。どちらへ?」
「えっと…シカクマメって民宿です」
「あれ…、ひょっとして知加良綾葉さん?」
「え…?」
どうやら電話の繋がらなかったお客さんは駅で倒れていた様だ。とにかく無事で良かった。ひとまず彼をシカクマメに連れて行く事にした。一緒に歩く彼はややフラついていてどうも不安だ。
「空気が美味しいですね。なんだろう。人があるべきところにある。そんな気持ちになります」
「慣れてる私にはよくわかりませんが、地元民として地元が褒められるのは嬉しいですね」
知加良さんは近くの小石に躓いて転倒しそうになった。私は急いで駆け寄り彼の身体を支えた。先程よりは良くなったとはいえやはり体調は優れないのだろう。彼は私よりも身長が高いが吹けばどこかへ飛んで行ってしまいそうな程に細くて軽い。
「ちゃんと食事は取ってます?」
「はい、3日ほど前に食べましたよ」
「ちゃんと毎日食べなきゃダメじゃないですか」
「そうなんですか?」
ボケてるのかと思ったがその表情は冗談を言っている風ではない。本気でそう尋ねているのだ。このままでは民宿に泊めた後に…。仕方がない。ひとまず彼を食事処に連れて行こう。私が食事に誘うと彼は特に反対せず付き合ってくれた。
歩けば歩く程に段々と彼は顔色が悪くなっていく。
「はぁ…はぁ…食事処まで遠いですね」
「後1kmぐらい先ですね」
「1km!?…車、車を利用しましょう…」
「タクシー呼ぶより歩いた方が早いですよ」
「俺はもう歩けません…」
困ったな…。仕方がないので私は彼をおんぶした。嫌がるかと思ったが歩かなくていいのならそれでいいんだそうだ。自分より身長の高い人を背負うのは中々変な気分だ。それにしても本当に軽い。
「力持ちですね」
「どうも」
知加良さんを店前で降ろすと中に入った。空いている椅子に座ってメニューを眺める。食たい物を中から選んでいると彼はいつまでもメニューの表紙だけ眺めていて中を開こうともしない。仕方がないので私は彼の元にあるメニューを開いて中を見せてあげた。
私が食べたい物が決まっても彼は無言のままメニューを眺めている。
「決まりました?」
「いえ…どれを食べていいか分からなくて」
「メニューはそれなりに多い方だと思いますけどね。何か好きな料理とかあります?」
「うーん…えっと、じゃあ同じ物を注文するので何か決めてください」
少し困惑しながらも私は肉うどんを2つ頼んだ。
「改めて自己紹介させていただきます、シカクマメの主人をやってる種々モロコシです。気軽にモロコシって呼んでください」
「よろしくお願いしますモロコシさん。俺も綾葉って呼んでください」
料理が来るまでの待ち時間、仲良くなろうと思って色々と話題を振ってみたが中々弾まず色々と質問しようにもかなり曖昧に濁されてしまう。何も話さないのでは気まずい。話題に詰まって黙っていると今度は綾葉さんの方から話を切り出した。
「この辺を観光して回りたいんですが、どこかお勧めとかあります?」
「細かく言えば色々ありますがまずはネットで調べて公式ホームページで紹介されている場所に行くのがお勧めですよ。町が力を入れてるはずなので。事前に調べて来たのであれば穴場を探すよりそちらを優先すべきです」
「ほぼ衝動的に予約して何も調べずノープランで来たんですよね。行き当たりばったりでいいかなって」
綾葉さんは1週間ほど泊まる予定でいる。確かに時間に余裕はある様子なのでそうした趣向の旅も良いと思うものの…中津町はお世辞にも都会とは言い辛く豊玉区は更に田舎だ。随分と変わった人だ。
「せっかくシカクマメを利用して頂くのにこんな事を言うのはなんですが、実は豊玉区はあまり観光地が多くないんです。中津町東側の伊多区、北側の聖丘区の方が多いんですよね…」
「学生時代の修学旅行で一度中津町に来たことあったんですけど、その時は豊玉区の雰囲気が一番好きだったんです。豊玉区の観光地について何でもいいので教えてください!」
そんなに熱心に頼まれてはその気持ちを無下にはできない。がっかりしたと言われたらそれはそれでショックだなあと思いつつ翼馬神社や狐岩をお勧めした。名称だけで思ったより食いついて来たのでちょっと驚いた。詳しい場所を言っていると料理が運ばれてくる。私達は一度話を中断して料理を食べる事にした。
綾葉さんの頼んだ肉うどんも私と同じ並盛だったが彼は大変申し訳なさそうにこんなには食べられないので少し貰って欲しいと頼んで来た。何というか…随分と食の細い人だ。
食事をしてからは綾葉さんも前より多少は血色が良くなった気がする。それでも体力は本当にないらしく帰りはタクシーで家に帰る事になった。こんな距離をタクシーで帰るのはもったいない。しかし彼はお金には困ってないようだった。シカクマメに戻るとカウンターで漫画本を読んでいた柊さんが出迎えてくれた。
私は彼を部屋まで案内した。一応お風呂は自由に使って構わないと説明してカウンターに戻る。それから彼女にこれまでの経緯について説明した。
「随分変わった人ですね」
「柊さんより変わってる人かもしれない」
「むむ、ライバル出現ですね。負けてられません」
柊さんは変人さで競う程自他認める変人だ。
もう店番は大丈夫だと伝えたが彼女はこの後やる事がないからここでゆっくりして行くそうだ。彼女は私の自室に寝転ぶと漫画本を広げて読んでいる。私の部屋の本は少なくないがもう彼女は全て読んでしまっている様に見える。今読んでる本も2、3回は繰り返し読んでいる様な…。
「個人的にはいつも助かってますが…どうして柊さんがここまで私に親切にしてくれるのか分かりかねます。どこかに出かけたり、友達と遊んだり、ここにいるよりきっと有意義な事は沢山あると思います」
柊さんは突然シカクマメに1人で現れ泊めて欲しいと言い出した。親の宿泊の同意書も金も持っていたので泊めた。それ以降、ここが気に入ったと言って度々遊びに来る様になった。何か家庭や学校で問題を抱えているのではないかと思って尋ねるがどちらも問題ないとしか答えない。
確かに体のどこにも痣や怪我の様なものも見当たらないし、ちょっと変わった子ではあるものの何やら精神的に病んでる様子もない。何を聞いてもぬらりくらりと躱されるのでひとまず彼女のやりたい様にさせている。
「以前にも申し上げましたが私は未来から来たあなたの孫なのです」
柊さんは仲良くなってから突然未来人であり私の孫である事を自称しだした。両親がタイムパトローラーなので過去にやって来たらしい。そう言う設定になっている。いつもいい加減な事しか言わないがこの設定は何故か変わらない。未来の事は聞く度に変わる上、近日の事を予言させても良く外れる。
「…そう言えばあの知加良ってお客さん、こちらには何泊するんですか?」
「1週間なんだって」
「にしては荷物少なくないですか?」
荷物は少ない方がお土産が入る…と思ったが彼のショルダーバッグは最低限の荷物以上の物は入りそうにない。私は旅行に出かけたら限定品など買ってしまって鞄やらバッグやらすぐにパンパンになりがちだが、まあ買わない人は買わないしなあ。
「あんなもんだよ」
「そうですかね」
柊さんはどうも綾葉さんが気になる様だ。一言にお客さんと言っても色んな人がいる。お客さんのプライベートには下手に足を突っ込まない。そういうものだ。
私と柊さんはカウンターの奥の部屋に移った。彼女はそこで読書の続きを行い私は描きかけのスケッチブックの絵の続きに着手した。絵は格別に上手いと言う訳ではないがこれも民宿同様に趣味だ。1日に数時間ずつ、1週間かけて1枚描いている。時々開催されるフリーマーケットで出品している。
柊さんは描いている絵を時々覗いている。完成品ならまだしも途中経過を見ても面白いとは思えないが…。
「今度はいつフリマに売りに行くんですか?」
「今月の12日から15日頃かなあ」
「じゃあその日は私も見に行きますね」
「店番がいなくなっちゃうよ」
「それもそうかぁ…」
「欲しい物があればこの中から好きに持って行っていいよ」
そう言って絵を描く手を止めてスケッチブックを渡すが彼女は右手を前に突き出して首を横に振る。
「いえ、いいんです。フリマでモロコシさんが啖呵売してるのが見たいのもありますし」
「啖呵売なんてやってないって」
良く分からない理由で受け取ってもらえなかった。私はキャンバス台にスケッチブックを戻して絵の続きを描いた。ふと、廊下の方を歩く足音が聞こえる。どうやら綾葉の様だ。彼の足音はこちらで止まらず外に向かう。おそらく観光に向かうのだろう。無事に辿り着けばいいけど…。
しばらくして喉が渇いて絵を描く手を止めると冷蔵庫に飲み物を取りに行く。冷蔵庫の中の飲み物が少なくなって来た。私は店を柊さんに任せて飲み物を買いに出かけようとするとと、玄関で近所の武渕さんと会った。背中には綾葉さんが背負われていた。
「よお、モロ坊。この人が道端で倒れてたけどあんたん所のお客さんやろ?」
田舎ネットワークは侮れない。武渕さんは彼を玄関に下ろすとさっさと帰って行った。私はお礼を言ってから柊さんと一緒に綾葉さんを確認する。それなりに穏やかな表情で寝息を立てている。彼の名前を呼びながら揺さぶるとすぐに起きた。
「ああ、こんにちはモロコシさん」
「こんにちは。綾葉さん倒れてたらしいですけど大丈夫ですか?」
「翼馬神社に行こうと思ったんですけどどこにも見当たらなくて…。何かもう暑くて意識は朦朧とするし、何か公園でストリートバスケしてる河童を見てたんですが、気が付くとここにいました」
何それちょっと見たい。
「夢でも見たんですよ」
「私、河童の頭領と1on1やって勝った事ありますよ」
「張り合わないの柊さん」
「まあ冗談はさておきモロコシさん、店番は私がやっておくので綾葉さんを観光に連れて行ってあげたらどうですか?」
「うーん…。ではお言葉に甘えて」
「お気になさらず」
自身の体調の良し悪しも良く分からない人だ。放っておけばまた観光に出かけるだろうし、その先で倒れているかもしれない。柊さんには申し訳ないと思いつつもここは彼女の言う通りに観光に連れて行ってあげる事にした。ついでに飲み物も買って来よう。
私は翼馬神社まで彼を案内してあげた。翼馬神社は住宅街の中にぽつんとある。改めて一緒に行くと余所から来た人にとっては不親切で分かりづらい場所かもしれない。もう少し場所の説明を分かり易く説明しておくべきだったと反省する。名前が大層な割にあまり大きな神社ではないので綾葉はすぐ近くに来ても見つけるのに時間がかかった。
綾葉さんは中をジッと見る。
「昔この辺には公持と言うお侍さんがいたんです。大変武勇に優れた方だったんですが、戦で負った傷が原因でお亡くなりになられてしまいまして。彼の愛馬のハクトウが彼の死を大変悲しんでいた様で…。類稀な駿馬だったので金に糸目をつけず欲しがる方々はいたのですが馬は元の主以外の誰も乗せようとしませんでした。ある日乱暴者の侍が無理矢理乗ろうとして転倒したんですが、それに怒って弓で射殺そうとするのです。その時、ハクトウに翼が生えるとまるで兎の様にひょいひょいと躱しそのまま天高く飛び去って行った…そんな逸話があります」
私は翼馬神社にまつわる話を彼に聞かせた。綾葉さんは大変興味を持った様で鳥居前で一礼して境内に入ると中を探索して回る。手水所で手を洗おうにも水がなかったので困惑しているのを見ると私は必要な時に必要な分だけ出す様になっているのだと説明して蛇口をひねった。そして出て来た水で一緒に清める。
彼は神社を確認したり周りの景色を楽しむ。私は無人販売所に手作りのお守りがあるなどちょっとした案内をした。彼は境内を一通り周りお守りを見ながら言った。
「こう言ってはなんですが伝説の割に小さな神社なんですね。もっと広い土地に祀ってもいいと思うんですけど…」
「前はもっと広かったんです。でもデパートやらアパートやらを近くに建てると言う話になって土地が狭くなりまして。今はこの通りいずれも残ってなくて家になってますが」
今は少子高齢化ですっかり廃れてしまったが昔はこの辺りも人通りが多く賑わった時期があったらしい。しかし時代と共に徐々に人がいなくなり若い人の多くは都会に流れて行った。そうして神社を縮小してまでこの辺に店を構えた所も少なくなっていった。ハクトウの呪いだとオカルト好きが言ったりする事もあるが、飛び去った馬を地元の人々が勝手に祀っただけなので祟る理由があるかどうか…。
この神社では特に仕事運と家族の無病息災のお守りが効果があるらしい。私も1年に1度はここで買っている。そのおかげか家族との間に特に問題はない。民宿もお客さんとの間に大きな金銭トラブルがないのもこの神社の御利益かもしれない。
綾葉さんはお参りを済ませると厄除けのお守りを買った。それから翼馬神社を出た。
「狐岩もここから近いんですか?」
「ここからは7、8kmは先の飯伏山の麓ですね。バスを利用すれば行けますけどこの時間帯なら帰りはタクシーになりそうです。麓と言ってもしばらくは歩くので日を改めては?」
時間は15時30分。彼も少し悩んだが大人しく明日回る事にした様だ。
「今から買い物に行くんですけど一緒に行きます?うちは素泊まりですが個室にキッチンはあるので簡単な物なら作れますよ?」
「ああ、昼ご飯食べたのでしばらくは食べなくても大丈夫です」
「そんな事言って武渕さんに運ばれて来たのついさっきじゃないですか。全然大丈夫じゃないんですよ、もうちょっと自分の身体を労ってあげてください」
「ふふふ、分かりました。ではそうします」
綾葉さんを連れてスーパー『トコシエ』に向かう。コンビニでも良かったが一応彼にこの場所を教えておくついでだ。ついでに食材も買っておこうと見て回ると彼も私について来る。たまたま行く場所が同じと言う訳ではないようだ。
私は遠くを指差した。
「お惣菜コーナーはあっちです。あっちが飲み物やアイスなどがあります」
「いやあ、正直何買えばいいか分からなくて。あはは」
そう言えば綾葉さん、良くも悪くも好き嫌いがないんだった。仕方がないので綾葉さんの分も一緒にお惣菜などを選んであげた。彼はニコニコ笑ってるだけで何を考えてるのか分からない。とりあえず食事バランスがよくなる様にお惣菜を選んであげた。
それにしてもこの人今までどうやって暮らして来たんだろう。少し不思議に思った。身なりは良さげなので日頃はお世話係がいるんだろうか?あれこれ考えながらレジに並ぶと財布を確認した。
「あっ」
まずい、飲み物だけ買いに来たつもりだったから手持ちの金が少なくなってるの忘れてた!私は焦って一度レジから離れ銀行でお金を下ろしてくるから待ってて欲しいと伝えるが彼は自身が払うからいいとショッピングカートを進める。
「ここ、カード使えませんよ?」
ベタと言えばベタだが念の為に伝えた。
「知ってますよ。だから現金持って来てます」
そう言って綾葉は財布を取り出す。さっきお守りを買ってたので多少の金を持って来てるのは知ってたが、よく見ると彼の財布はやけに札束が入れ込まれ分厚くなっていた。確かにあれならお金に困る事はないだろうが、あんな大金を持ち歩いたってこの辺じゃそんなに使い道ないだろうに…。
よく分からないが彼には彼の考えがあるのだろう。そう考える事にした。そうして無事にレジで支払いを済ませると私は彼にお礼を言ってエコバッグに物を詰める。彼も半分は持ってくれた。
家に帰ると柊さんが入れ替わりにそろそろ帰ると言ってシカクマメを出て行った。それからは綾葉さんは個室に戻って行った。私は冷蔵庫に飲み物や食材を入れるとタンスにしまってたお金から支払って貰った額のお金を引き出して綾葉さんの所に向かった。
彼の部屋は半開きになっていた。不用心だと思いつつノックするとやって来た。玄関に食べ物が置きっぱなしになっている。
「さっきは本当に助かりました。ぼーっとしてて…」
レシートの金額を渡すと「いいのに」と言いながら受け取ってくれた。
「老婆心ながら今は暑くて食材も傷みやすいので食べないのであれば早めに冷蔵庫にしまってくださいね」
「分かりました」
彼は笑顔で答えた。大丈夫かなと思って部屋を後にしようとしたがある事に気が付いた。冷房が付いてない。
「重ね重ねすみません、エアコンのリモコンは壁にかかってますので」
「今そんなに暑くないですよ」
私が可笑しい事を言ったかの様に笑った。充分に暑いし彼自身も汗をかいている。中に入って冷房を入れたい気持ちを抑えてとにかく挨拶を済ませて彼の部屋を後にした。
しかし随分と変なお客さんを迎え入れてしまったなぁ…。
大雑把にプロットを書く→執筆を始める→プロットに大幅な変更を加える→大幅な添削が必要になる。という事と多忙の日々もあって元々の投稿予定から物凄く遅れた。プロットはちゃんと練って書くか、大幅な変更をするのは…やめようね!←
追記
括弧付けてひらがなとかカタカナ入れるとルビ振りしてくれるの凄い