番外②・宰相の苦労、魔王は知らず。
マジ、ヒドくないか?
俺は子供の頃から、優等生で勉強や運動が出来るタイプだった。顔は……まぁ普通だけど、親や教師達に将来を期待されていた。
中高と受験を難なく突破し、更には有名大学を一発合格した。
そんなエリート街道、一直線!だった俺だが、社会人になって転げ落ちた。
最初の就職先で、クソのような上司に大当たりをして、パワハラモラハラ地獄。
ついでに、職場のお局若造りババァに、強制セクハラを受け、しかしそれが何故か俺がやった事になり、退職に追い込まれた。
次に就職した先は、残業三昧のブラック企業だった。
毎日毎日、日付が変わるまでサービス残業、休み返上の出勤、気が触れそうになった。
もう絵に描いたような転落人生。
誰に相談しても「社会ってそういうモノ」「働くという事は我慢するという事」と、あしらわれた。
一番ムカついたのは「自分の若い頃はもっと大変だった」というヤツ。
知るかそんなの!
俺は、働く為に生きているんじゃねぇ!
働くなんて、俺の人生において、ただのオプションだ。
しかし、鬱になった俺は、気がついたらヨレヨレのスーツのまま、会社の屋上に立っていた。
そんな時、あの世界の神様に呼ばれた。
神珠を届けて欲しい、そう頼まれた。
『これ、あれじゃね!?異世界転生……、まだ死んでないから、召喚か!』
二つ返事で承諾した。
召喚される前、神様に神力と言語能力以外に一つ、チート能力をあげると言われた。
俺は、回らない頭で考えて、“強運”が欲しいと伝えた。
どんだけ、強かろうと頭がよかろうと、運が悪ければ全てが無駄になるからだ。
俺の人生がそうだった。
かくして俺は神珠を持って、その神が作った世界に降り立った。
結果を言おう。
見るも無惨に、殺された。
俺が召喚された時代は、まだ魔王国も無く、古代文明みたいな状態だった。
召喚陣に現れた俺を見るなり、石槍持ってウホウホしてそうな、半裸の奴らに捕まり、まず神珠を奪われた。
そして、真っ裸にされると、瘴気が吹き出している場所に連行された。
あれよあれよという間に、神珠と一緒に柱に括り付けられ、瘴気の噴射口に掲げられた。
火炙りならぬ、瘴気炙りである。
そう、俺は召喚されるなり、ついでに生贄にされたのだ。
手に持たされた神珠が勢いよく、瘴気を吸っていくが、一緒にいる俺は溢れた瘴気に炙られる形になる。
生きたまま、じっくり体が腐り落ちていく、地獄みたいな体験をして死んだ。
死ぬ直前、遠くから神様の「ごめ〜ん!」という、呑気な声が聞こえた。
おいコラ、強運スキルはどうした!?
次に目を覚ました時、俺は“俺”じゃなくなっていた。
召喚当時はなかった魔王国の貴族に、生まれ変わったらしい。
オーサーと名付けられ、豪華なレースのお包みに包まれた。この必勝パターンにあぶあぶと笑う。
しかし、母親らしき女が俺を抱くなり、ものすご〜い形相をした。
その時はよくわからなかったが、以来、家族は俺を避け、放置するようになった。
家族が放置するから、仕える召使い達も自然と俺を避ける。
生きるギリギリの世話をされ、それ以外は完全なネグレクトだ。
これもよく読む、ライトラベルの必勝パターンと、呑気に構えていた俺だったが、事実を知って驚愕するハメになる。
ある程度、成長し自力で移動できる様になって、自分の転生した姿を初めて鏡で見た。
『ん?カエル?……室内に小汚い格好をしたカエルがいる。』
肌が肌色のカエルが、立っていた。……間違いなく俺である。
神様は俺に、恨みでもあるのだろうか?
フツー、異世界転生したら美形に生まれるのがセオリーじゃん?
せめて、整っているけれど、貴族的には地味とかさ?
なんで、カエル?しかも、カエル顔じゃなくて、純粋なカエルなんですけど?
しかも肌が肌色で、余計に気持ち悪い。うわ、ベロがめっちゃ伸びるんですけど。
あ〜、これはうん、家族も避けるよね、わかる。わかりみが深い。
自分以外の家族の容姿は、うっすら青白い顔に首や腕などに細かな鱗が生えていて、指の間には水かきがあった。
でも、容姿は人に近く、俺から見ても儚げな美形の部類に見えた。
何で俺だけ、カエル?っと思って調べると、父方の祖父がカエル系で、しかもかなりの極悪人だったらしい。
その祖父にそっくりなせいで、俺は家族からネグレクトを受け、ひもじく孤独な幼少期を送るハメになったのだ。
それでも前世がある俺は、家を逃げた後の将来の為に、独学で勉学や魔法を学習しながら、何とか生き延びた。
そして“初代魔王の呪縛”について知った。
俺の胸にも、黒い術式があるが、なんか色が薄い気がする。灰色っぽい。
あれか?魂が異世界人だからだろうか。
我が家には、初代魔王から曽祖父が賜った護符が、額に入れられ飾られている。
それをたまたま、メイドが掃除中に誤って床に落とし、破片で護符を傷つけた事件が起きる。
そのメイドは、黒い術式がある胸をおさえ、血泡を吐き出しながら、もがき苦しみだした。
苦しむだけ苦しむと、体が燃え上がり、意識がある状態で炭になるまで焼かれて死んだ。
その様を見た俺は、誰もいない隙をついて、護符をちょっとだけ傷つけてみた。
半分な自分に呪縛が発動するか、知りたかったからだ。ただの好奇心である。
これで死んだって、別にいいやという気持ちもあった。
結果、俺は生き延びた。
ものすご〜〜く、胸の術式に痛みがあったが、命には関わらなかった。
痛みがあったのは、体が魔族だから。
死ななかったのは、魂が異世界人だから。
わかったからとはいえ、特に何もしないが。
そんなある日、俺は実の弟からの嫌がらせで、あの地下下水道に落とされた。
魔王城を含む、王都全体に広がる迷路のような地下下水道は、俺の家の地下にも広がっていた。
敷地内の裏に隠すように、マンホールのような物があり、そこから落とされたのだ。
そこで、醜いカエルの子はスライムの餌になれと。
蓋が閉められた暗闇の中、呆然としていると、思いもよらぬ人物に出会う。
第四代目魔王、その人である。
自分の胸の金の術式を剥がす、実験帰りだった魔王は、コソコソと地下道を通って、城に戻る所だったらしい。
当時、幼かった俺は四代目様と知らず、突然声をかけられ、驚くと同時に、思わずしがみついてしまった。
驚いた四代目様だったが、満足な食事も貰えず、ガリガリに痩せた体で必死にしがみつく俺を見て、困った顔をして、そのまま腕に俺をぶら下げて城に連れ帰った。
四代目様の腕に食らいつく俺の登場に、側近のトールが驚きつつも、俺を剥がして風呂に入れたり、食事を与えてくれた。
四代目様は、俺から地下にいた事情を聞くと激怒し、何と実家を取り潰した。
そして俺を引き取ると、頼んでもいないのに、四代目様は健康面や教育と色々と世話を焼いてきた。
そうして俺は、元が優秀だった事もあり、あっという間に宰相の地位をもぎ取った。
そして二人が、初代の呪縛を消そうと奮闘している事を知り、変な所で詰めの甘い四代目様のフォローを渋々していると、「素直に手伝ってくれてもいいのに。」とトールに笑われた。
べ、別に、四代目様の為じゃないんだからねっ!とだけは言っておく。
そしてあの雷の夜の事件が起こる。
四代目様が、何者かと交戦し、行方不明となった。
行動を共にしていた側近トールは、昏倒させられ重症。
肝心の四代目様は、どこを探しても行方がわからず、魔力さえ探知できない。
元々、初代様の方針に歯向かう傾向にあった四代目様を、目障りに思っていた城の者たちは、彼の方を敗北者とし、王の座を奪った。
それ所が、四代目様が反対意見を押し切って、やっと使用を禁じる事ができたあの“複製工場”を、復活させようと動き出した。
側近のトールは、四代目様を守れなかった責任を押し付けられ、身分を奪われ地下へと落とされた。
何もできなかった俺は、腑が煮え繰り返る思いだった。
そんな俺に出来る事は、水面下で工場復活を阻止しつつ、四代目様の捜索をする事だけだった。
しかし、どんなに俺が優秀でも、所詮は独り。限界が近づいていたある日、四代目様の執務室で見張りが暗殺された。
その見張りの傷から、地下に落とされたトールの魔力を僅かに感じた。
そしてもう一人の傷は、トールがかつて受けた傷を同じ……?
混乱した。
嫌な予感がして複製工場へ赴くと、おかしな格好の者に襲われた。
その者に馬乗りにされた時、懐かしい声に忠告される。
「待てヤマダ(仮)!……聞け、ここはすぐに吹き飛ぶぞ。オーサー、身を守れ!」
「!、そのお声は4代目様……?」
困惑する俺を置いて、四代目様達は、嵐の様に去っていった。
俺はすぐに起き上がり、地下の複製室に入る。
奥の祭壇には、四代目様の胸にあった金の術式があった。
そしてその周りには……、
「あれ?何だっけこれ……どこかで……外国映画で見たような、爆弾だこれ!」
遠い記憶の中に、チンケなB級映画で見たヤツだ!……でも、なんでそんな物が異世界に?
周りを見渡すと、壁やこの祭壇にも高価な術符が大量に貼られている。
こちらは魔力は通っていないようだが……。
よくわからんが、四代目様がずっと望んでいたこの複製工場の破壊を、実行しようとしている事は伝わった。
でもこれじゃあ、祭壇は破壊できても、工場全体は無理だな。
ならば、この俺にできる事はひとつ。
「やるならド派手にいこうじゃないの!」
自分と周りの兵士達に出来るだけ、強い結界魔法を展開する。
そして祭壇の爆弾が爆発する直前に合わせて、周りに貼られた術符に魔力を送り、爆発の威力を爆上げする。
四代目様に伝えられずにいたが、俺にも出来るんだよ。初代の作品破壊が。
ああ、胸の黒い術式が激痛を起こすが、構っていられるか。
どいつもこいつも舐めやがって。
結界越しに伝わる衝撃。
想像を遥かに超える大爆発。
結界が砕ける音がする。
クソ上司も口くせぇお局も、クズ会社も。
勝手に期待して落胆して、俺を見捨てた親も。
したり顔でゴミみてぇな説教かます生ゴミ共も。
インチキ神もどきも。
刮目しやがれ。
俺は、受けた恩を倍返しにする男。
「カエルの恩返しだ!ワハハハハッッ〜」
爆風に思いっきり飛ばされながら、俺はガッツポーズを取った。
後に、焼け野原になったのを見て、ちょっとやりすぎたと思った俺は、ちゃっかり四代目様のせいにしたのだった。
カエル宰相のお話でした。
実は、ヤマダ(仮)と同じ、召喚された人でした。
この後、神様からもらったチート“強運”で、ちゃっかり無傷で助かり、ヤマダ(仮)達に合流したという訳です。
転生後、ニカちゃんこと桜子さんのように、前世の記憶を失わなかったのは、チート“強運”で転生できた為です。本人が知らない所で、ちゃんと機能していたのでした。
ちなみに、神様が呼ぶ子を選ぶ時間軸は、あえて“現代(昭和〜令和)”から探しています。
下手な使命感がなく、それなりに教養があり、また好みの性質が多いからです。
自分の世界の時間軸は守るけれど、他の神の世界の時間軸は無視しています。
なので、①宰相→平成(ほぼ令和)、②過去の聖女→昭和、③ヤマダ(仮)→令和 の順番で適当に探して、呼んでいました。
以上、補足でした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。




