果たしてこれを2次創作と認めてしまっても良い物か…5-1
「今日も紅茶はおいしーのですぅ…?」
「そーだねぇ?」
その日もカラードと一緒にお茶をするのんびりとした時間を私は過ごしていた。
そして今日のお茶のスペースは何時もとは違う所なのである。
予期した訪問者がなーぜーかーフルートルゥフ家の中庭で?
演説を繰り広げているんだぁから仕方がない。
降りかかる火の粉は振り払うのではなくて火の粉が飛んで来ない所で、
お茶をするのである。
「ふははははは!今ここに宣言する!
我らガファッシャルド王国第3王子であるギルグレイザーは、
グランユールに対して宣戦布告を行う事を決断した!
辛く苦しい決断であったが…
ルフェリナが涙を流した事を私は許すつもりは無いのだ!」
「「「「「」おおー!」」」」
何か聞こえて来てしまった気がするがそれは気の所為なので気にしない!
フルートルゥフ家の中庭で行われるガファッシャルド王国の、
秘密で極秘 (全くなっていない!) の決起集会が行われていたのだ。
けれどその秘密で極秘の決起集会なので私達はフルートルゥフ家の
人々は参加する事を許されなかったのだ(したくない)。
それは数日後に控えている王族が行う宣誓の練習らしい?のだ。
ガファッシャルド王国の指針が決まった事による宣誓。
それはグランユールに対しての侵攻作戦の準備をする為の、
検討会を開くための調査をする事を決定した事を告げる宣誓らしい。
あ?それは本当に侵攻する事になるんかねぇ?と疑問を覚えるほどに、
てけとーな宣誓である。
そして…私達は知ったこっちゃねーので?お茶を続けていたのである。
それはアールガンお兄様の結婚式が終って数か月後の事だった。
悪の巣であるダークネストの諜報員の諜報はとっても素晴らしく、
グランユール連合王国の内情を丸裸にしてしまっていたのだ。
いや、丸裸だったのだ。マジなのだ。
グランユールの王子様方と高貴な方々の私生活が、
おもしろーいほどに事細かに報告されていたのだ。
つまるところ乙女げーの攻略対象者達8人。
王子と側近の朝から晩までの詳細である。
当然その中身には軍事行動の予定も部下の兵士達からの報告も、
含まれている訳でねぇ…。
流石だなぁって思っていた。
パックル王子他側近のショーン宰相?なのかな今は。
ヨードス王子とその部下のゴルドン将軍?
アーフォス王子にガンドル剣士?
ジックーゾ王子とバーラン宰相?だったかな…
もう名前も覚えてないんよ。
滅茶苦茶な内乱のお陰でねぇ…
諜報の内容はおはようからお休みまで。
王子と側近の甘く乱れた私生活を暴くような内容で、
お城…だったと思うのだけれど?見たい放題だったのだ…
偵察され放題って…警備ガバガバじゃねーか。
と言いたくなったのはともかくね。
諜報の報告書がとっても艶めかしいのだ。
いやお盛んなのはわかっているんだけどさ?
想像力を掻き立てられ引き込まれる無駄に状況を把握できる、
その報告書は報告書と名乗っていなければ官能小説なのだよ。
それを始めて見せてもらった時はうわぁ…としか言えなくなっていた。
けれど同時に続きが見たいと思える内容だったんだよねぇ…
…当然その内容を見たルフェリナ王子妃様は感動したのだ。
「ギルグレイザー!これは良い!良いのよ?!」
「うむ…しかしこのままではいかんな!」
「ええ!才能は活かすべきなの!勿論「夢」を加えるわ!」
えーとやりやがったよわが姉は。
エロは人を進化?…深化?させるのか皆…
「王子様の日常」シリーズとして、
名前も変えずにガファッシャルド王国内で販売しやがったのだ。
あ、作者名は誰か解らないんだけど「悪の女幹部」っすね。
で、だ…
唐突で?販売された小説ぅ…とはなーんにも関係のない話なんだけどね。
グランユールは連合王国名でありその下には各国の名前が入る。
正式な読み方で言うのであればそれは長ったらしい名前だから、
グランユールでまとめている。
それで各々の王子の正式名称は。
パックル・ダブリング・グランユールなのだ。
それに続いて。
ヨードス・リッチレイク・グランユール
ジックーゾ・ライトニング・グランユール
アフォース・パワード・グランユール
とまぁそんな具合でね?
悪の女幹部によって出版された本は、
それぞれに何を意味しているのか私にはまったく解らないのだけれどさ?
「~に住まうと」タイトルを付けての販売だった。
―二つの輪を持つ王国に住まうパックル王子は…―
(因みに国名ダブリング王国)
―水の豊かな王国に住まうヨードス王子は…―
(因みに国名リッチレイク王国)
―輝かしい王国に住まうジックーゾ王子は…―
(因みにライトニング王国)
―力ある王国に住まうアーフォス王子は…―
(因みにパワード王国)
勿論前書きに定例分がある。
そして偶然の合致はあるらしいんよ。
悪の女幹部の話では奇跡は起こりうるのだから。
でも妄想だよ?
―この物語はフィクションです―
実在する団体云々のアレが記載されている「妄想」で「夢」なのだし。
で出版された内容は国名だけ伏せられて王子の名前はそのままに、
愛溢れる「くんずほぐれつ」な内容が赤裸々に描かれていたのだ。
王子様とお姫様?愛人?の夜の営みから始まるアレと、
姫?なのか痴女?なのかわかんないレベルの「乱れ」など。
宰相を引き入れての愛憎劇に発展しそうな内容もあってさ…
勿論グランユールにも流出したよ。
ルフェリナ姉様がさ?故意にさせたよ。
国際問題になりかねない発禁になりそーな内容なのだけれどね?
ベースとした報告書をよりドラマチックにして読みやすくしているだけで、
これ、ガファッシャルド王国に差し止めしろって言って来ようもんなら。
フィクションがノンフィクションだと言っている様な物でさ。
「事実」だって認める様なもんでしょ?
本の内容は「本当」だって信憑性を高める事になるんよ。
でも実際ほとんど諜報をベースにした「本当」の事なんだからたまらない。
世のお嬢様達が赤い液体を鼻からブチ撒けるほどに情熱的で官能的なのだ…
まるで他国の王室の王子様の痴態を赤裸々に語っている様な物だと。
それでも姉様は言い切った。
「王子様の名前はたまたま知っている人の名前だった偶然なのよ。
それにほら?何処の国の事なのか書いていないでしょう?
これは妄想であり夢なの!そして素敵な2次創作なのよ!
ミルマーヤ昔教えてくれたでしょう?
これは報告書(1次創作?)を元に作った2次創作なの!」
「うぇ?あ…れ?(私そんな事言った?)」
「作者が黙認してくれる限り創作の花は開くのよ!これは文化の開花なの!」
ぶ、文化の開花はともかく…
違う!姉様!それは2次創作じゃない!
あ、いや2次なの?
2次だけどそうじゃない!
2次創作界隈が作者の暗黙によって守られた云々は言ったけど!
諜報結果を一時創作にするってどーなのよ?
しかし市場原理は理不尽だった。
売れた。
売れたのだ。
王子様の日常シリーズは。
続きを見たいと所望するご令嬢方が増えれば増えるほど、
作者に対する寄付金(諜報活動費)は活発になり、
より官能的でより素晴らしい「お国の乱れ」が一次創作される。
それを見た「悪の女幹部」の執筆活動は捗る捗る。
そして一次創作の守りはオースヴァインとの戦いでボロボロな所為で、
人材不足の上にガファッシャルドから執拗な諜報活動で、
邪魔な物は2次創作の為に排除させられたのだ…
…読者が喜びを覚える度に一次創作は活発になっていくのである。
なんでも読者があまりにも増えたそうで商人から印刷機(あったの!?)を、
購入するレベルらしく…
生産された王子様の日常シリーズは商人さんが買い取ってくれたらしい。
「いいわ!実にいいのよ!…この、なんていうのかしら…
頭に響くこの感覚…久しく感じていなかったのだけれど…
これをガファッシャルドだけで留めておくのは駄目ね。
全シリーズを戴くわ!」
…商人の奥さんが乗り気らしくて相当数が船に積み込まれたらしいよ?
これは更に諜報活動が捗るんだろーなぁ…