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こうやって正義だか悪だかわからない組織が作られる。 3-1


緩やかな温かさの中。

良い天気な事もあって私は今日もカラードと一緒に

お屋敷の2階のテラスでお茶を楽しんでいた。


「今日もお茶がおいしーのです」

「そうだねぇ…」


フルートルゥフ領は今日も平和…


ドンドンドンと三回の炸裂音が鳴り響いて、

その後にワァーと歓声が上がったのだ。


平和のだったはずなんだけどなぁ…

フルートルゥフ家のお屋敷は町の中心から少し離れた所にある。

それでもあのバカでかい音と町から沸き起こる歓声は聞こえて来てしまうのだ。

近頃は4大バカ軍隊の戦いの所為もあって避難民も増えてきていた。

勿論国境の町の警備は第三王子妃の妹が住まう町と言う事で?

更なる兵士の増員が行われていた。

…ってことなんだけど国境線がズレた事で領軍や兵士を持て余し気味の、

我が実家レーゼルバルドからの手厚い支援と言う名の雇用創出と、

ガファッシャルド王国軍の陸軍将軍が実戦経験を積ませたいのぉ~と言う、

何とものんびりとした理由で前線に兵士を大量に配備する事になってしまった。

当家も今まで4大バカ軍団に成り下がった奴等に売っていた穀物は、

だぶつき気味であり、ガファッシャルド王国が国境警備兵への食糧として、

買い取ってくれてその納品先は軍と言う形で消費して下さる。

とてもありがたい消費地となっていた。

今やフルートルゥフ領には領軍・王国軍。レーゼルバルドの私兵が、

肩を並べて訓練をしながら血迷ってたまに攻撃を仕掛けてるく4バカ軍を、

フルボッコボッコにする日々が続いている。

荒くれ者の多い軍を抱え込むと色々と酷い事になると思うでしょ?

所がガファッシャルド王国には悪のダークヒーローがいるから大丈夫?なのだ。

大丈夫になってしまったのだ。

そしてさっきの炸裂音はそのダークヒーロー登場の合図なのである。


「天知る地知る人が知る!我は地獄からの使者!ギルグレイザー!

我の定めた悪よ!裁きの時だ!」

「同じく悪の幹部!千里眼のルフェリナ!今日もギルグレイザーと共に!」

「「「「「おおぉ」」」」」


その登場シーンに皆歓声を上げて悪を成敗するシーンを楽しみにしているのだ…

因みにあのギルクレイザー王子の口上文を考えたのは私だったりする。

だってさ〇〇〇ザーとかって名前日曜の朝にやってる戦隊ものの、

ヒーローっぽく感じたんだもん。

ある日突然姉様が手紙が届いてさぁ…


―正義を執行する時の掛け声ってどんなのがいいかしら?―

―そのパートナーが一緒に名乗る言葉も考えてね!―


って手紙が来るんよ。

そりゃ…適当に前世の知識を動員して考えましたよ。

ついでに出来るだけ古めかしい直情的な言葉を選びましたよ。

正に中二病って奴?

で、でもさそれを本当に使うって思わないよ!

思わないよね???

そして剣と魔法の世界であればダイナミックに戦って、

勝利を収めてしまう2人なのだ。

あ、うん。

正義執行だった。

執行のレベルも多々あるみたいで本気でぶっ殺すものから、

だめぇえだめだめぇ~成敗レベルの話まで。

ただやられた側は「心にとっても深い傷」を負う事になったり、

天に召されるところもあるからもう一度社会復帰するのは大変だと思う。

で、今回は国境から侵入して来た悪の組織?の討伐と、

軍で問題を起こしていた奴等を本当にボコる話だった。

うーん正義執行も大変だ。


勿論集めた資料から敵のアジトを突き止めて

突撃して成敗するまでがワンセット。

第三王子夫妻のお忍び旅行(笑)として我が領地である、

フルートルゥフ家を選んでくださったのはとても喜ばしい事だ。

そして正体不明の謎のヒーローがフルートルゥフ家の領地に、

頻繁に現れる事になったのだ。


「ミルマーヤ。

秘密のお仕事があるから私達の事は気にしなくていいわ。

ただ町で気になる事なんかを纏めた資料を頂戴?」

「あ、はい」

「それじゃあ当分の間領内でたのしませてもわうわ」

「…え~とご安全に?」

「そうねご安全になるのよ」

「はい」


ええと、別に仮面とかしている訳でもなく名前も偽っていないのだけれど、

ギルグレイザー様は地獄からの使者らしいっすよ?

王子様じゃないらしいんですわ。

当然なのだが?千里眼のルフェリナも

第三王子妃である私の姉様ではないらしいです。

二人はダークヒーローらしいので王族ではないのだそうな…

正体は解かっておるけどね?解ってははいけないの。

謎のダークヒーローらしいの…

なんの免罪符か解らないけれどね。


そんな姉様たちであるのだけれど毎日ダークヒーローをしている訳じゃなっくて、

お屋敷で私と一緒に寛ぐ事も当然ある。

そういったときギルグレイザー様はカラード様と一緒に、

頭脳戦を繰り広げる事になっていた。

ボードゲームなんだけどね。

あの時、フルートルゥフ家を占領した時に負けた事(ご慈悲で勝った)が、

悔しかったらしく何度も再選を挑んでるのだけれど…


「カラード伯爵貴殿は強い。

だから秘密結社に所属せんか?」

「…ご遠慮いたします」

「うぬう…作戦参謀として是非ともほしいのだが?」

「殿下?ボードゲームと実際の作戦を一緒にしないでください…」

「そうか。それもそうだな?」

「そうなのです」


旦那様同時の駆け引きは続くのだけれど…

作戦参謀と言う意味ではルフェリナ姉様の方が絶対に上なのだ。

何処まで想定内で組んでいるのか解らない位に不思議な「勝ち方」を

するのだから。


…でもねぇ一緒になってダークヒーローごっこは無いんじゃないかなぁ?

頭足りてないパックル王子は論外として普通の貴族の方が、

姉様には良かったと思うのだよ。

今の破天荒な状態を考えるとね?

絶対に他にも選択肢はあったはずなのだ。

王子でなくとも隣国の有力貴族でもさ?


「ルフェリナ姉様?ルフェリナ姉様はどうしてギルグレイザー王子の事を、

気に入ったのです?」

「だって彼、危険物を周囲に置いてその中でダンスする事が好きなのよ?

それは惚れてしまうでしょう?

危ない火薬の匂いほど彼を魅力的にするのだから…」

「…あ、うん」


あっれれぇ?

ルフェリナ姉様は頭のネジが飛んでっちゃったのかナ?

提案したのは私だったのだけれど…

そりゃないよと言いたくなったよ。

ルフェリナ姉様は完璧な公爵令嬢だったのだ。

そしてその完璧性を見せつけながらパックル王子を補佐していた。

周囲は姉様に期待してそれに姉様は答えていたけれど、

当然補佐される側の気持ちは解からない。

まるで自身が「ダメ野郎」と言われ続けているように感じてしまうのだ。

解るわぁー。

私だって完璧超人ルフェリナの妹と言う立場であり、

姉は優秀なのに妹は…ってよく言われたからね!

それでも腐らなかったのは中身の年齢が高かった事と、

やっぱ「本物」を間近で見て来た私にとってそれは当然事だって、

直感で理解してしまっていたからなのだ。

他人は他人。

私は私と割り切ることは当然できないんだけどさ。

明らかに違う生き物と思えるほど、張り合うのが馬鹿らしくなる差が、

私と姉さまの間にはあったのだ。

前世があるかならんなのさ?

他者を支えて自身も並び立つ事の難しさを知っていれば、

ルフェリナ姉様と張り合う事なんてありえないのではなくしたくない。

姉様は本物であるからこそ私の数倍の勢いで努力しその持っていた、

才能を開花させ続けているのだ。

確かに他者が進む成長速度では無かったけれど、

その成長速度を1でも2でも上げる為に教育係は姉様を支援したし、

その教育に姉さまは答え続けていたのだ。

パックル王子がダメダメさんでも良いように。

そしてそのダメダメパックル王子が

「努力を放棄して遊んでいても大丈夫」な様に姉様は周囲の期待に応えたのだ。

それを知っているそして見て来た私としては、もう脱帽で完敗なのですよ。

私が眠くなって寝てしまっても姉様はその日出された課題が終るまでは眠れない。

休日ともなればお父様やお兄様について行って領地の環境の厳しさ。

国外からの圧力に忍耐強く耐える為に交渉を繰り広げる…

一度交渉事をする為の部屋に同席させてもらった事があるけどさ。

その時、私は途中で退出させてもらったよ。

だって「キレるもん」あんな話を聞かされよく自重できるもんだ。

感情を前に押し出すなって言われて守れる気がしなかったもーん。

そして交渉事が終って「何もなかった事」と言う決着が付くんだけどさ?

いや命がけで戦って国を守った「兵士達」にそれを告げると、

その場では納得したフリをしてくれて…

彼等はその跡、陰で泣いているのだ。

戦友を殺されて。家族を殺されて。

それでも国として。

公爵家として。

「何もなかった事」にしなければいけない苦しさ。

あの場にいたら気が狂いそうになる。

お父様が言った、


「決して涙を見せるな」


その言葉の真意を考えると感情を抑え込めって事の練習なのかもしれんが、

私はあの時あの一回で「ダメだった」相手を殺したくてたまらなくなる。

その日私が特別に参加する事が許されたのは、

私が強く願った事。

そしてその犠牲者が私のお友達が混じっていたからだった。


「我慢する。けっして騒がない」


それを約束して壁際の一番出口に近い扉の付近で「参加」する事を、

許してもらったのだ。



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