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語られる物語とその内情には温度差があるのだ。 2-1

時は少々さかのぼる。

グランユール王国が国内でドンパチを始めた頃予定通りにレーゼルバルトと、

フルートルゥフは予定通りにガファッシャルド王国に組み込まれる事になったのだが…


「あ、紅茶がおいしーのです」

「そうだねぇ…」


伯爵夫人となった私は新しくできた国境の向こう側。

荒れに荒れまくって偉い事になっている4大勢力のぶつかり合いを、

高みの見物で見ていた。

そうしていられる位に余裕がある事になってしまっていた。

今や我が伯爵家は隣国であったガファッシャルド王国の傘下に収まり、

ルフェリナ姉様の手引きで融和的に領土の置換を終えたのである。

実家であるレーゼルバルド家を引き継いだお兄様が「反乱(笑)」を、

しでかして「お父様は必死に抵抗(笑)」をしでかしたそうなのだが、

お兄様の公爵家把握はすさまじい速さで終わり、

血を流す事は…

(あ、祝勝会?(予定通り)の準備で、

シェフが指切ってケガしたとか言ってたな)

あったがそれでも最小限の流血でこの反乱は終わったのだ。

お父様とお母様はお兄様の権限によって人質としてガファッシャルド王国へ、

旅こ…違った「王国の理念を理解させる洗脳教育」を施されるため、

一時的に預けられる事になり、

同時にガファッシャルド王国の大侵攻作戦が行われたのである。

その壮大な作戦の指揮を取る事になったのは嫁いだ姉様の旦那様。

ガファッシャルド王国第3王子、

ギルグレイザー・ガファッシャルド王子であった。

なんともまぁ「悪の王国」の王子らしい名前だなぁとか思いつつ、

ルフェリナ姉様も鎧を纏って悪(?)の参謀として帰宅…

じゃない侵攻してきたのだ。

それからガファッシャルド王国長年の宿願だった穀倉地帯と、

水源を手に入れる為に大侵攻が私達の「愛する(笑)」母国である、

グランユール連合王国に攻め込んできたのである。

連合王国の盾となるレーゼルバルド公爵領を大胆に攻略して、

そのターゲットとなったのは私が嫁いだフルートルゥフ家であった。

当然裏切った連合王国の盾であるレーゼルバルド領の様に

フルートルゥフ伯爵家に一国と戦うだけの戦力はなく…

一気に領都まで攻め挙げられてしまったのだ。

そしてギルグレイザー王子は私の旦那様であるカラードとの、

一対一での決戦を(執務室で)する事になったのだ。


使用人によってガチャリと扉は開かれて、

旦那様はギルグレイザー王子を迎え入れる。


「ようこそおいで下さいました」

「ちがう!間違っているぞカラード伯爵!

ここは「き、貴様ら我がグランユール連合王国を侵攻して

ただで済むと思っているのか!」だろう?」

「あ、はいそうでした。で、では言い直して。

キ、キサマラ!ワガグランユールレンゴウオウコクヲ、

シンコウシテタダデスムトオモッテイルノカ!」


旦那様のセリフはとっても棒読みで素晴らしい演技だった。

けれどギルグレイザー王子は満足してセリフを言い続けるのだ。


「ふはははは。我がガファッシャルド王国の強さを思いしったか!

だが…まだまだだ。

勇敢に戦った(?)貴様に私と戦う栄誉を与えてやろう。

そして戦い万が一にも勝った場合我がガファッシャルド王国は、

撤退する事を誓ってやる」

「あ、はい」

「ちがう!違うぞカラード伯爵!ここは、

「そんな事信じられない!」だ!」

「…そうでしたね。

「ソンナコトシンジラレナイ」」

「ふははは。だがそれでも貴様はこの戦いを受けるしかなくなるのだ!」


ギルグレイザー王子の後ろに控えていたルフェリナ姉様が、

その「決死の交渉」を続ける横をすり抜けて私の所までやってくる。


「ひさしぶりねミルマーヤ(あ、私の名前ね)。元気にしていた?」

「もちろんです姉様。日々楽しくのんびりとした日常でしたよ」

「それは良かった」


私の姿を見た姉さまは安心して私をぎゅっと抱きしめてくれたのだ。

それから姉様は私の頭を優しく撫でてくれて。

久々の姉妹の再開を私達は喜んだのであるが・・・


「ふははは!よくやったぞ我が参謀!

さぁーカラード伯爵!最愛の妻を人質に取られたのだ!

戦わない訳にはいくまい勝負だ!」


そうやって仲良くしている私達はギルグレイザー王子にとっては、

どうやら違ったみたいで旦那様は思考が停止してしまって硬直してしまった。

それでもなんとか持ち直して交渉?を続けようと頑張ってくれる。

そうです!旦那様勢いにまけてはいけませんよぉ~


「…え?あ、そ、そうですね?」

「ちがーう!ここは燃える展開だろう!

「く、くそ!そこまでして私と戦いたいのか!

良いだろう私の隠してきた力を見せつけてやろう…

済まないミルマーヤお前の命を私に預けてくれ」だ」

「ソコマデシテワタシトタタカイタイノカ!

イイダロウワタシノカクシテキタチカラヲミセツケテヤロウ・・・

スマナイミルマーヤオマエノイノチヲワタシニアズケテクレ」

「いい!実にいい展開になったな!」

「ソウデスネ」


茶番に付き合わされている旦那様は可哀そうだと思いつつ。

この茶番は何時までつつくのかなって考えてたのである。


「姉さま?この寸劇は何時まで続くのでしょうか?」

「ん?大丈夫よそのうち終るわ。

形だけでもカラード伯爵はガファッシャルド王国に抵抗して、

屈服させられた編入した事にしておいた方が面倒が無くて良いのよ。

寸劇はギルグレイザーの趣味と実益を兼ねた

「歴史造り」みたいなものだから付き合ってあげてね?」

「は、はぁ」

「カッコイイ歴史が欲しいのよ」


ほら、後ろに書記官がいるでしょう?と姉さまが指を刺した先には、

必死になって王子の言葉を記録する書記官達が、

旦那様の用意しておいてくれと頼まれた机に座って、

必死に言葉を書きとっていたのだ。

そしてその王子の演技指導付きの旦那様との交渉を目をキラキラさせながら、

見ている辺り「原作」を書いたの彼等ではないかなって勝手に思っていた。


「さぁ!ミルマーヤ伯爵夫人もここで、

「わたくしの事は気になさらず、最後まで戦って下さいまし!」だ」

「ワタクシノコトハキニナサラズ、サイゴマデタタカッテクダサイマシ」

「いい!実にいいぞ。物語は盛り上がってきている!」

「そうですね」

「旦那様が楽しい様でなりよりです」


そして楽しんで演劇を組み上げているルフェリナ姉様はとても楽しそう。

ではなく楽しいんだろうなぁ…

そりゃー「相性がばっちり」になっただろうね。

因みにこの後はチェスみたいなボードゲームで対戦して勝敗を付けるのだが…

私の旦那様はその手のゲームはお強いのだ。

で、そのギルグレイザー王子は逆に弱いと言うか弱すぎた。


「ま、待ってくれカラード伯爵!その手はその手だけは」

「…またですか?」

「し、しばし考えるから!」


ここでギルグレイザー王子が勝って旦那様が全面降伏の後、

調印してガファッシャルド王国へと組み込まれると言う、

シナリオだったらしいのだが。

ギルグレイザー王子が勝てない。

勝ってくれないから旦那様も頭を悩ませる事になったのだ。



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なんて迫真の戦い(笑)
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