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33.毛玉は薬草が主食のようです

「お兄ちゃん薬草って持ってる?」


 僕は鞄から薬草を探すが、すでにモススが食べ切ってしまったようだ。


「何に使うの?」


「今日は鋭い!?」


 どこかバカにしているように聞こえたが、聞き間違いだろう。僕はいつでも鋭い思考の持ち主だからな。


 それにしてもなぜマリアが薬草を欲しがっているのだろうか。


 モスス以外に薬草を食べるやつを知らない。あるとすればコボルト(・・・・)ぐらいだ。


 コボルト…….?


 あっ、毛玉がコボルトなのを忘れていた。


 そういえば、最近スクスクと大きくなっていると思ったら毛玉も薬草を食べているのだろう。


 僕は反省の気持ちを込めて毛玉をもふもふする。魔力が奪われている気もするが勘違いだろう。


「よし、兄ちゃんが薬草を取ってくるよ!」


 僕はそう言って冒険者ギルドに向かうことにした。





 オーブナーに冒険者ギルドに行くことを伝えるとすぐに止められた。


 貴族街を一人で歩くのも危険だからと、オーブナーとともに平民街にある冒険者に向かう。


 貴族街は基本的に馬車で移動していることが多く、歩いている人はお店に入る貴族か店で働いている人ぐらいだ。


 だから貴族街を通る馬車は周囲を気にせず突き進む。道でぶつかっても平民だから良いという考えらしい。


 オーブナーと共に貴族街を抜けると、穏やかな貴族街から一変して、賑やかな平民街となる。


「いらっしゃい! 肉焼きは……貴族の小僧は食べないか」


 僕の服装を見て商店のおじさんが声をかけた。ただ、僕の隣にいるオーブナーを見て貴族だと思ったのだろう。


 昨日よりは服を着崩しているが、着ている物が綺麗だから貴族に見えるのだろう。


「肉焼きください!」


 お金を取り出しておじさんに渡すが、おじさんはオーブナーと僕の顔を交互に見ている。


 きっと肉を与えて良いのか戸惑っているのだろう。


「俺も一本もらおう。お釣りはいらない」


 オーブナーは僕が渡したお金を回収すると、僕のポケットに入れた。代わりにオーブナーが払ってくれた。ただ、おじさんに渡していたのは銀貨だったはず。


 王都の肉焼きってこんなに高いのだろうか。


 肉焼きは歯応えがあって、ジューシーでとても美味しかった。


「今度はみんなで行こうね!」


 せっかくならマリア達と一緒に来た方が楽しいだろう。少し寄り道しながらも、街を見て王都の中を楽しむ。


「着いたぞ」


 目の前には大きな建物が建っていた。この間までいた街も大きいと思ったが、王都の冒険者ギルドは僕が思っている大きさを遥かに超えている。


 扉を開けると冒険者達が溢れかえっていた。


 鎧に身を包んだ人やローブを着た人。今まで見てきたギルドとは別物に感じるほど賑わっていた。


「よっ、オーブナーも来たのか!」


 僕達の存在に気づいたのかロンリーコンとショタッコンが近づいてきた。


「お二人ともおはようございます」


「今日もリックは可愛いな」


 ショタッコンは毎回僕のことを可愛いというが、頭に乗っているモススと間違えているのだろうか。


 いつもの見慣れた顔に安心して、Aランク冒険者がいるかもしれないのに、頬が緩んでしまう。


「うっ……眩しい」


 ショタッコンは胸を押さえてなぜか苦しんでいた。


 僕を傷つけたAランク冒険者がいるか確認すると、どうやらいないようだ。


 オーブナーに聞くと、よほど冒険者という仕事が好きじゃないと、貴族がギルドにいることはないらしい。


 確かにパーティーに誘われた時以外は見たことがなかった。


 元々後腐れない僕を囮として選んだのだろう。


「今日も薬草を採取しに行こうと思います」


「おっ、そうか。俺らもついて行くけどいいか?」


「僕は構いませんよ」


 なぜかロンリーコンとショタッコンも一緒に森へ行くことが決まった。僕が初めて王都周辺で採取するのが心配なんだろう。


 あの時出会ってから二人とも、ずっと僕達のことを気にしてくれている。


 僕は本当に良い人達に出会ったようだ。


「気づいたら上位種に付いて行くからな」


「僕はただ薬草を採取しているだけです」


 決して魔物に付いて行っているわけではない。魔物が僕に寄ってきているのだ。


 ただ、僕はもふもふできるから別に問題はない。


 今日はどんなもふもふと出会えるのか楽しみだ。


「おい、あの小僧Sランク冒険者とパーティー組んでいるぞ」


「何者なんだよ」


 この時、僕は王都の冒険者ギルドで何と呼ばれているのかはまだ知らなかった。


可愛いモススのためにブックマーク、★★★★★評価よろしくお願いいたします。

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