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22.オーブナーの頭はもふもふのようです

 僕達はマリアが作った服に着替えて調理場に向かった。これもマリアが料理中に服を汚すといけないからと、首に引っ掛けて服が汚れないようにする、服の上から着る服だ。


 服の上に汚れても良い服を着るって不思議に思っていたが、これが意外にも便利なのだ。


 何度も洗わなくても良いし、汚れるのを気にして作業しなくても済む。


 マリアより不器用な僕には必要なアイテム。そんな服を僕とマリアは色違いで着ている。


 早速調理場に向かうと、たくさんの野菜が置いてあった。森で取った鳥もそのまま置いてあったが、流石に血抜きとかも知らないためそのまま放置することにした。


 僕達ができるのは野菜の皮を剥くことだけだろう。


 前よりも魔力が回復して元気になったマリアも楽しそうに皮を剥いていた。むしろ、僕の方ができると思ったが、手先が器用なマリアの方が料理も向いているようだ。


「オーブナー部屋は空いているか?」


 作業をしていると入り口から声が聞こえてきた。きっと新しく来たお客さんなんだろうか。ただ、今宿屋には僕達しかいない。


「おーい!」


 調理場からひょっこりと覗くと僕の知っている人達が立っていた。


「えーっと、ロンリーコンさんとショタッコンさんですか?」


 この間冒険者ギルドでお世話になった冒険者達だ。S級冒険者で冒険者の中でも高ランクの二人だ。


 冒険者にはランクがSSS級まで存在しているが、今存在しているのはSS級までだ。


 ちなみにこの間全裸になったのが、ショタッコンの方らしい。


「君はあの時の少年ではないか!」


 玄関にいたはずのショタッコンが、気づいた時には僕の目の前にいる。野菜の皮を剥いていて、汚いのに迷わず優しく撫でた後に手を握っていた。


 これは何かの挨拶なんだろうか。とりあえず僕もマネするように、優しく撫でながら握り返すことにした。


「あああ、罪深き少年だ」


 わずかに息がハァハァとしているが、体調が悪いのだろうか。


 オーブナーがいないため、部屋の空きがわからない。代わりに僕達の部屋で寝てもらった方が良いのだろうか。


「おい、お前はこれ以上罪を増やすつもりか」


 そんなショタッコンを僕から引き離すようにロンリーコンは引っ張っていた。


「小僧迷惑かけてすまないな」


「いえ、大丈夫ですよ」


 ショタッコンは無理やり剥がされたのが嫌だったのか、ロンリーコンを睨みつけていた。


「それでオーブナーはいるか? ここの部屋を貸してもらおうと思ったんだけどな」


 最近コボルトの出現が減ったことで、街に来る人が増えたらしい。その人達が泊まれるように、ショタッコンとロンリーコンはオーブナーの宿屋に変えてきた。


 二人とも静かな宿屋が好きなんだろう。奥にあるこの宿屋は一目につかないからな。


「お兄ちゃん野菜の処理が終わったよ?」


 野菜の皮剥きが終わったのだろう。野菜を持ってマリアが近づいてきた。


「天使様がいる……」


「おい、ロンリーコンお前まで魅了されたら……」


「天使様、どうか私を下僕にしてください」


 突然ロンリーコンはマリアの目の前で跪き、剣を差し出していた。突然の出来事で僕もマリアも固まっている。


 ただ、モススと毛玉は違うようだ。二人してロンリーコンの顔を目掛けて攻撃をしている。


「お兄ちゃん下僕って何?」


「いや、僕もわからないよ」


 オーブナーもだけど、大人は僕達が知らない言葉をたくさん知っているようだ。


「尊い!」


 そんな僕達を見た二人はなぜか目を輝かし、手を重ねるように祈っていた。


 本当に変わり者の二人組だ。


 僕達はどうするべきか戸惑っていると、森に行っていたオーブナーが帰ってきた。何か嫌なことがあったのだろうか。オーブナーは足元をずっと見ている。


「オーブナーさんおかえりなさい!」


「糸取れなかった」


 どうやら森に糸を探しに行ったが、見つけられずに帰ってきたようだ。夕食の準備もしないといけないから仕方なく帰ってきたのだろう。


 声をかけるとゆっくりと顔を上げる。その顔はどこか落ち込んでいた。


「んっ、お前らは――」


 僕達の目の前にいる二人と目が合うと、オーブナーは急いで僕達を抱えて引き離した。


「こいつらに何のようだ」


 やはり強いとは思っていたが、突然動きが速くなるオーブナーが本当の姿なんだろう。


 特に何かされたわけでもなく、警戒しているオーブナーを見てどこかモススと似たような感じがした。


「僕達のためにありがとうございます」


 降ろしてもらった僕は何となくオーブナーの頭をもふもふ撫でると驚いた顔をしていた。


 思ったよりもオーブナーの髪の毛はふんわりとしていた。


「ありがとうございます」


 そんな僕を見たマリアもオーブナーの頭をもふもふとしている。


 いつのまにか僕達はもふもふするのが癖になってしまったようだ。


 あとはオーブナーに任せたら良いだろう。


 僕達は調理場に野菜を置いて部屋に帰ることにした。


「オーブナー貴様!」


「ぶっ殺してやる!」


 なぜか宿屋が騒がしくなっていたが、それが僕達のせいだとはその時はまだ知らなかった。

可愛いモススのためにブックマーク、★★★★★評価よろしくお願いいたします。

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