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中の人(4)

すべての非リア充、陰キャ、ボッチ気質、インセルに捧ぐ

 日本最大の小説投稿サイト『ヨミマル』に投稿されているこのジャンルの作品数は約百万作もある。ライトノベルの人気作品の多くは、このサイトでランキング上位の投稿作品が、出版社から書籍として出版され、一般的な認知を得たものだ。

 ネットで調べてみると、ここ十年で日本の文芸市場の売上が半減する中で、ライトノベル作品の売上はその約四割を占めている。作品が文芸批評の対象になることも、権威のある文学賞の対象になることもないが、ライトノベルはこの十年で、おそらく日本最大の小説ジャンルとなっている。出版不況の中で、累計発呼部数が一千万部を超えた作品も、ここ五年で二十作近くある。

 テンプレートが共有されていて、作者と読者の–––つまりプロとアマチュア–––の距離が近いため、生産と消費が同時に拡大する正のスパイラルが起きているのだろう。


 小説のタイトルは『転生王子オージンの遍歴と冒険』にした。ペンネームは、出身地から取って「喜多Q太」にした。

 

 俺は、飲み干したストロングゼロの缶を握り潰して、冷蔵庫から新しい缶を取り出した。アルコール濃度9%のこの甘ったるい発泡酒は依存性が高く、危険ドラッグに近いから規制してはどうかと薬物専門の精神科医がネットに書いていたのが話題になっていた。酒の味が好きで飲むのではなく、単に酔うため、嫌なことを忘れるために飲まれている傾向が高いというのが、その根拠だ。この飲料に求める効用が俺と同じ人間は世の中に多いらしい。

 窓の外に目をやると、工場跡地が街灯に照らされて白々と闇に浮かび上がっていた。

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