転生
すべての非リア充、陰キャ、ボッチ気質、インセルの人々に捧ぐ
気がつくと草原の上に横たわっていた。瞼を上げると、頭上の枝葉をくぐった木漏れ日がちかちかと眼球を刺した。木陰を作っている木には馬が繋がれていた。馬の背には、赤のビロード地に金の装飾が施された豪華な大布が敷かれ、その上に紋章が浮き彫りされた鞍が乗っている。近くに川があるらしく、せせらぎの音が聞こえる。
オレは身を起こした。自分の体を見下ろすと絹のような素材でできた銀色の胴着とインディゴ・ブルーの麻布のズボンを着ているのがわかった。胴着は、金糸で紋章が刺繍されている。紋章は、牙の長いサーベルタイガーのような動物に剣を持って立ち向かう騎士の姿の図像だった。
ここはどこなんだ?
そもそもオレは、何でこんな格好でここにいるんだ? 病院で白衣を着た状態で目を覚ますならともかく。
上半身を起こして、あたりを見回していると馬に乗った老人が近づいて来た。
「オージン様、こんなところでお休みになるのは危険です。今は、隣国のバンコ王国との関係も良好ではありません」顎髭を長く伸ばした白髪の老人は言った。
「オージン」それがこの世界でのオレの名前のようだった。
俺はノートPCのディスプレイから目を離すと、ストロングゼロの缶に手を伸ばした。